労働基準法では、一週40時間、一日8時間を超えて労働させてはならないとされています。
(労働基準法第32条)
但し、次の場合には例外的に一週40時間、一日8時間を超えて労働させることができます。
災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合で、所轄労働基準監督署の許可を受けた場合(労働基準法第33条)
労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表するものとの間で書面による協定をし、所轄労働基準監督署に届け出た場合(労働基準法第36条)
そして、一週40時間、一日8時間を超えて労働させた場合は割増賃金を支払わなければならないとされています。(労働基準法第37条)
それでは、一週が月をまたぐケースや、一日の労働が暦日をまたぐ場合についてはどのように考えればよいのでしょうか。
一週が月をまたぐケースについて
そもそも一週が何を指すかについてですが、通達によれば
一週間とは、就業規則その他に別段の定めがない限り、日曜日から土曜日までのいわゆる暦週をいうものであること。
(昭63.1.1 基発1号)
このように取り扱うものとされています。それでは、以下の条件で一週が月をまたぐ場合の取り扱いを検討してみたいと思います。
一日の所定労働時間 8時間
法定休日 毎週日曜日
賃金締切日 毎月月末
一週間について就業規則等で特段の定めがされていない
最後の週に48時間(月~土 8時間×6日)勤務し、この週が翌月にまたがっている
この場合、最後の週が月をまたがっているので、月末でリセットして最後の週を当月と翌月に分けて考えるのか、あるいは同一週として分けずに取り扱うのか疑問が生じます。
また、同一週として取り扱うならば、割増賃金は当月分として支払うのか、あるいは翌月分として支払うのかという新たな疑問が生じます。
まず、第一の疑問について、一週が月をまたぐ場合の取扱いについての法令や行政解釈がありませんので、一週が月をまたぐ場合であってもリセットするような特別の取扱いはせず、原則どおりに暦週で(今回の事例では日曜日から土曜日まで)一週を分けずに労働時間を計算することとなります。よって、土曜日に勤務した8時間分が一週40時間を超えることになりますので、8時間分の割増賃金を支払う必要があります。
次に、第二の疑問として8時間分の割増賃金は当月分として支払うのでしょうか?あるいは翌月分として支払うのでしょうか?この点について、一週40時間を超えることが確定するのは月をまたいでからになりますので、翌月分として支払うことで構いません。
一日の労働が暦日をまたぐケースについて
先程の一週が月をまたぐケースと異なり、一日の労働が暦日をまたぐケースについては、通達により明らかにされています。
一日とは、午前0時から午後12時までのいわゆる暦日をいうものであり、継続勤務が二暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも、一勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の「一日」の労働とすること。
(昭63.1.1 基発1号)
翌日の所定労働時間の始期までの超過時間に対して、法第37条の割増賃金を支払えば法第37条の違反にはならない。
(昭26.2.26 基収3406号、昭63.3.14 基発150号、平11.3.31 基発168号)
これらの通達から分かるように、暦日をまたいで勤務する場合は翌日の始業時刻になるまでは一日の労働として取り扱い、一日の労働のうち8時間を超える部分については割増賃金を支払うことになります。なお、午後10時から午前5時までの労働については深夜労働の割増賃金の支払いが別途必要となりますので、ご注意ください。
(今回は解説をシンプルにするために変形労働時間制等の適用を受ける場合は考慮せず、労働基準法第32条の原則的なルールでご説明させて頂きました。)