筆者は過去に製造メーカーで働いていた(製造現場も1年半以上経験あり)ので、改善活動を当たり前のものとして受け入れています。しかし、製造業では当たり前の改善活動も他の産業ではあまり活発でない場合もあります。
今回は、労働新聞(第3398号 令和5年4月24日)よりヤマハ発動機株式会社の事例をご紹介します。そこから、小改善の積み重ねが大きな効果に繋がることをご理解いただければと思います。
ヤマハ発動機株式会社の事例
ヤマハ発動機株式会社では、機械の設置位置などを見直して誰もが働きやすい職場環境づくりを推し進めています。
同社では女性比率が4割程度で、男性と比較して低身長であることなどからくる作業のしづらさが課題となっていました。
たとえば機械装置から部品を取り出す作業では、肩、腰、肘に負担が掛かっていることが観察により分かりました。特に女性の場合は身長の低さをカバーするために伸び上がったり、奥まで腕を伸ばしたりしていたため、男性よりも身体負荷が大きくなっていました。
そのため、機械装置の位置を低くして、さらに少し手前に傾けるようにしました。その結果、身長にかかわらず作業がしやすくなり、かつ、角度が付いたことで操作性も向上したことで、身体負荷が低減しました。
その他にも、指先や手首に負荷が集中していた部品の仮止め作業に電動ドライバーを導入したり、肘への負荷が大きい作業についてサポート用の器具を用意するなど、身体負荷軽減の改善が数多く取り入れられています。
ひとつひとつの改善効果は小さくても、改善を積み重ねた効果は目に見えて分かるものとなりました。組み立て作業の工程では、毎日1人当たり2時間程度あった残業が激減しました。
その要因を分析したところ、疲労度低下の影響が大きかったのです。以前は夕方になると作業ミスが増えていました。手直し作業や手待ち時間が生じることで計画どおりに作業が進まず、挽回するための残業が発生していましたが、それが解消されたというわけです。
働きやすい職場は採用難の時代にマッチする
働きやすい職場づくりは採用難への対策としても有効です。働きやすい職場は、女性、高齢者、障害のある方にとっても働きやすいと言え、採用対象が広がることになります。
また、働きやすい職場になることは求職者から選んでもらいやすい企業になることでもあります。応募の動機付けや入社の決め手となることも当然あるでしょう。
ちょっとしたこと、簡単なことからで構いませんので、小改善を継続的に積み重ねてみませんか。