人口減少社会となり労働人口も減少する中、政府は外国人労働者の流入促進を図っています。実際に外国人労働者と接する場面が増えてきていますし、業界によっては外国人労働者が不可欠となりつつあります。そこで今回は、外国人労働者を雇用する際に重要な「特定技能」の概要と、企業が整備すべきポイントについて説明します。
在留資格「特定技能」とは
外国人は、出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」とします。)で定められている在留資格の範囲内でしか日本国内での活動が認められません。たとえば、「留学」の在留資格は、原則として就労が認められていません。(例外として、資格外活動許可を受けることで、短時間のアルバイト程度は可能になります。)
一方で、日本での活躍や貢献が期待される高水準の技術・知識・経験・技能を持つと認められる外国人に対しては、「技術・人文知識・国際業務」「技能」「介護」などの在留資格を与え、日本国内での就労を認めています。(但し、それぞれの在留資格が認める範囲の業務しか行うことはできません。たとえば、料理人として「技能」の在留資格を与えられた外国人が、料理人を辞めて介護職に転職することはできません。)
今回解説する「特定技能」とは、国内人材を確保することが困難な状況にある特定産業分野において、労働力確保を目的として、一定の技能を有する外国人の就労を認める在留資格として新たに設けられました。特定産業分野とは、①介護、②ビルクリーニング、③素形材・産業機械・電気電子情報関連産業、④建設、⑤造船・舶用工業、⑥自動車整備、⑦航空、⑧宿泊、⑨農業、⑩漁業、⑪飲食料品製造業、⑫外食業の全12分野が定められています。
特定技能は1号と2号があり、1号は一定の知識または経験を必要とする技能を要する業務を、2号は熟練した技能を要する業務をこなせる水準であることが求められます。1号の対象産業分野は12分野すべてで、在留期間の上限は5年です。また、2号の対象産業分野は介護を除く(※)11分野で、在留期間の上限がなく、家族帯同が認められます。
※在留資格「介護」があるため、介護分野は特定技能2号の対象分野としていません。
このように特定技能は、①労働力の確保を目的としているため、高水準の技術・知識・経験・技能を必要とせず、単純労働を含む幅広い業務に従事させることができ、②労働力が不足する産業において長期の就労を期待するものであると言うことができます。
外国人労働者を雇用する場合のポイント
外国人を雇用するにあたり、まずは在留カードなどにより在留資格と在留期限を確認することが重要です。その上で、自社の求人内容と外国人の在留資格が適合しているかの検討が必要です。先程の例でも挙げたように、介護職の求人に対して「技能」の在留資格を持つ外国人が応募してきても、介護職として働かせることはできません。在留資格や在留期限に問題が無く、実際に雇入れることになった場合は、当該外国人の氏名や在留資格などについてハローワークへ届け出ることが定められています。(離職の際もハローワークへの届出が必要です。)
また、外国人労働者であっても社会保険(労災・雇用・健康保険・厚生年金保険)の適用を受けますし、その基準は日本人の場合と同じです。(日本人の場合と異なる点として、年金に関して脱退一時金(※)の制度が設けられてます。)
※外国人が帰国(一時的でないもの)する際に、収めた保険料(最大で5年分)の払い戻しを請求することができる制度
雇入れ後は、外国人労働者と価値観や考え方の相違によるトラブルが発生することも考えられますので、外国人労働者が職場に馴染むまでは外国人労働者本人と密にコミュニケーションを取ることは勿論のこと、上司、同僚、取引先等とも密にコミュニケーションを取り、職場への適応を進めることが必要でしょう。