前回の記事(退職後に傷病手当金を受給する場合の注意点(雇用保険))では退職後に傷病手当金を受給する場合の、雇用保険との関係で注意すべき点について解説しましたが、今回は老齢退職年金給付との関係で注意すべき点について解説します。
傷病手当金と老齢退職年金給付の間で支給調整がある
傷病手当金の支給を受けるべき者(第百四条の規定により受けるべき者であって、政令で定める要件に該当するものに限る。)が、国民年金法又は厚生年金保険法による老齢を支給事由とする年金たる給付その他の老齢又は退職を支給事由とする年金である給付であって政令で定めるもの(以下この項及び次項において「老齢退職年金給付」という。)の支給を受けることができるときは、傷病手当金は、支給しない。ただし、その受けることができる老齢退職年金給付の額(当該老齢退職年金給付が二以上あるときは、当該二以上の老齢退職年金給付の額の合算額)につき厚生労働省令で定めるところにより算定した額が、傷病手当金の額より少ないときは、その差額を支給する。
(健康保険法 第108条第5項)
老齢退職年金給付が支給されるときは、原則として傷病手当金は支給されない
原則として、国民年金法、厚生年金保険法その他各種共済組合法に基づく老齢または退職を支給事由とする年金給付であって政令(健康保険法施行令 第37条)で定めるもの【本稿では老齢退職年金給付と呼びます。】を受けることができるときは、傷病手当金は支給しないものとされています。但し、老齢退職年金給付が全額支給停止されているときは除きます。
2018年6月5日 追記:
老齢厚生年金は支給調整の対象ですが、これは60歳代前半の特別支給の老齢厚生年金も含まれます。
老齢退職年金給付が支給されても傷病手当金が支給される場合
老齢退職年金給付が支給されるときは、原則として傷病手当金は支給されません。但し、支給される老齢退職年金給付の額(二以上の老齢退職年金給付が支給されるときは、そのすべてを合計した額)を360分の1した額(1円未満切り捨て)が傷病手当金の支給日額より少ないときは、その差額が支給されます。(健康保険法施行規則 第89条第2項)
(全国健康保険協会 傷病手当金を申請される皆様へ より抜粋)
なお、傷病手当金と老齢退職年金給付との支給調整は、あくまでも退職後に傷病手当金を受給する場合ですので、在職中であれば傷病手当金と老齢退職年金給付との支給調整は行われません。