パート・アルバイトの就業調整を生む「年収の壁」への対応として導入された事業主の証明による被扶養者認定の円滑化が、2025年10月の厚労省通知で恒久化されました。さらに、2026年4月からは、労働契約内容(労働条件通知書等)に基づく見込み年収で、より予見可能性の高い認定が可能になります。
事業主の証明による被扶養者認定「恒久化」のポイント
何が変わる?
これまで「当面の対応」とされていた事業主証明による円滑化が恒久化。人手不足による一時的な収入増(残業・繁忙手当等)で見込み年収が130万円相当を超えても、事業主の証明を添付すれば扶養継続が可能という運用が続きます(原則連続2回までを想定)。
対象となる「一時的な収入変動」
残業手当、繁忙手当、突発的案件などに伴う臨時的な収入。基本給の引上げや恒常的手当の新設等、継続的増収が確実な場合は対象外。
提出タイミングと様式
資格取得時や年1回以上ある資格確認(に付随する収入確認)の場面で、通常の書類(収入証明など)に事業主証明を併せて提出。保険者(協会けんぽ/健保組合等)により取扱いが異なる場合がありますので、詳しくは保険者の案内に従いましょう。
労働契約内容による被扶養者認定(2026年4月〜)
概要
労働条件通知書等に記載の賃金・所定労働時間・日数から算出した見込み年収が被扶養者の認定基準額(後述)未満で、他の収入が見込まれない場合、原則被扶養者として取り扱います(同一世帯・非同一世帯の要件は従来どおり)。
見込みに含めないもの
契約上明記がなく、契約段階では見込み難い時間外労働の賃金等は見込み年収に含めません。
契約変更時の確認
賃金改定や労働条件の変更・更新があれば、被扶養者要件の再確認(書面提出の求め)を行います。
給与以外の収入がある場合
年金・事業所得など給与以外の収入がある場合は、従前どおり総収入で判定します。
基準額・年齢区分と「生計維持」要件の再確認
被扶養者認定は、収入基準だけでなく生計維持要件もありますので、あらためて確認しておきましょう。
基準額の目安
原則130万円未満。19歳以上23歳未満は150万円未満。60歳以上または一定の障害者は180万円未満。
生計維持の確認
同居なら原則として被扶養者の年収は被保険者の年収の1/2未満。別居の場合は、被保険者からの援助額(仕送り額)より被扶養者の年収が少ないことが条件。
人事・総務が今日から整えておきたい実務
- 労働条件通知書の記載精度向上(賃金、所定労働時間・日数、契約期間・更新条項を明確化)。
- 被扶養者認定フローの見直し:新規認定/年1回確認の際の提出書類に「事業主証明(臨時的収入)」を追加。
- 契約変更時の説明をしておく:被扶養者の賃金改定・就業条件変更があったら会社へ報告するよう事前に従業員へ説明しておく。
- 他収入の申告ルール整備:年金・事業所得・不動産収入等の把握方法を整える(従来どおり総収入で判定)。
- 保険者のローカルルール確認:健康保険組合の場合は組合独自のルールを設けていることがあるので事前確認。
よくある誤解と注意点
- 「突発的な残業で一時的に収入が増えると直ちに被扶養者から外れる」わけではない:臨時的な収入増なら事業主証明で扶養継続の余地あり(制度恒久化)。
- 「契約にない残業代も見込みに入れる」必要はない:契約段階で見込めない時間外賃金は見込み年収に含める必要無し。
- 「収入基準は一律130万円」ではない:19歳から22歳は150万円、60歳以上または一定の障がい者は180万円が基準となる。
