ワンオペで休憩時間はどうなる?
人手不足で「ワンオペ」勤務が増える中、休憩時間の取り扱いは経営者や人事担当者にとって重要な課題です。
労働基準法第34条では、以下のように休憩時間を定めています。
- 労働時間が6時間を超える場合:45分以上
- 労働時間が8時間を超える場合:60分以上
- 休憩は労働時間の途中に与えること
- 労働者が自由に利用できること
ここで見落とされがちなのが「労働者が自由に利用できること」です。単に「作業していない時間」ではなく、完全に労働から解放される時間であることが必要です。
手待時間と休憩時間の違い
顧客が来ない時間は休憩になる?
結論から言うと、顧客が来れば対応しなければならない状態では休憩時間になりません。
行政通達や裁判例では、次のように判断されています。
- 手待時間:何かあればすぐに対応しなければならない状態 → 労働時間扱いとなり、賃金の支払いも必要です。
- 休憩時間:業務から完全に解放され、自由に利用できる時間(何かあっても対応する義務が無い)
例えば、すし処「杉」事件(大阪地裁 昭56.3.24)では、「客が途切れた時に適宜休憩してよい」という取り扱いは、休憩時間ではなく手待時間と判断され、賃金支払いが命じられました。
ワンオペで休憩時間を確保する方法
店を閉める必要がある理由
繰り返しになりますが、休憩時間は完全に労働から解放されることが必要です。
これに関連して、住友化学工業事件(名古屋地裁 昭50.12.5)では、「休憩時間の始期・終期が定まっていないと、安心して休めない」と判示されています。
手を休めていても顧客が来れば対応が必要な状態では、労働者は使用者の指揮命令下にあることになり、休憩時間とはみなされません。
したがって、ワンオペの場合は、休憩時間を確保するために一定時間は店を閉める等の対応が必要があります。
現実的な対応策
- 一時的に店を閉める(ランチ営業からディナー営業までの間に一定時間店を閉める等)
- 補助者を活用して休憩を取らせる(比較的余裕のある時間帯にパート・アルバイトを入れて、その時間帯に休憩を取らせる等)
- そもそも1日6時間以内の勤務とする
- シフト調整で部分的にワンオペを解消する(早番(8時から14時)、中番(11時から20時)、遅番(17時から23時)として、一時的にワンオペを解消して、中番に30分ずつ合計1時間の休憩を取らせる等)
まとめ
- ワンオペで「顧客がいない時間は休憩」の取扱いは、休憩させたことにならない
- 法的リスク(過重労働問題や未払い賃金請求等)や行政リスク(労働基準監督署の是正勧告・指導)を避けるため、完全な休憩を確保する仕組みが必要
- 一時的に店を閉める、補助者を活用するなどの対応が現実的
参考情報
- 労働基準法第34条
- 厚生労働省「休憩時間に関するQ&A」
- 行政通達(昭22.9.13 発基17、昭39.10.6 基収6051)
- 裁判例:住友化学工業事件(名古屋地裁 昭50.12.5)、すし処「杉」事件(大阪地裁 昭56.3.24)