先日、学生アルバイトを採用したときの社会保険加入についてお問い合わせを頂きました。適切に対応していないとアルバイト従業員からクレームが出るかもしれませんので、注意が必要です。(以下は、本稿執筆時点の情報に基づいて記述したものであり、将来において内容が変更になる可能性があります。)
<労災保険>学生アルバイトも労災保険の適用を受けます。
労働者災害補償保険法第3条には「この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする。」とあり、労働者を一人でも雇用すれば労災保険の適用があります。ここで言う労働者とは、労働基準法第9条で定める労働者と同じものとされており、同法9条によると「労働者とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」とあります。ここでは、年齢や労働時間の長さ、賃金の多寡には特に触れられていませんので、原則として、アルバイトも含む全ての労働者が労災保険の適用を受けることになります。
なお、労災保険には被保険者という概念が無いため、被保険者となる届出はありません。法律上当然に労災保険の適用を受けます。(個人経営の農業で5人未満の労働者しか雇用していない場合など、一部例外を除く。)
<雇用保険>
学生アルバイトは雇用保険の適用を受けないことが多いですが、例外もあります。
雇用保険法第6条で雇用保険の適用を除外する者について定められていますが、そもそも1週間の所定労働時間が20時間未満である者は適用除外とされていますので、まずは所定労働時間を確認しましょう。
次に所定労働時間が1週20時間以上ある場合ですが、雇用保険法第6条第1項第4号で「学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条、第124条又は第134条第1項の学校の学生又は生徒であつて、 ~中略~ 厚生労働省令で定める者」が適用除外とされています。
まず前半部分に記載のある学校教育法に定められている学校は、次のものです。
- 幼稚園(第1条)
- 小学校(第1条)
- 中学校(第1条)
- 義務教育学校(第1条)
- 高等学校(第1条)
- 中等教育学校(第1条)
- 特別支援学校(第1条)
- 大学(第1条)
- 高等専門学校(第1条)
- 専修学校(第124条)
- 各種学校(第134条)
英会話教室は学校教育法に定める学校に(一般的には)該当しませんので、英会話教室の生徒は適用除外になりません。実務上難しいのは専修学校や各種学校で、学校と名の付くものは意外に多くあります。判断に迷う場合は、文部科学省のホームページで専修学校・各種学校の一覧が公表されているのでそちらで確認するか、もしくは管轄のハローワークに確認しましょう。
次に「厚生労働省令で定める者」ですが、雇用保険法施行規則第3条の2によると、次のいずれかに該当する場合は適用除外の対象から外れます。
- 卒業を予定している者であって、適用事業に雇用され、卒業した後も引き続き当該事業に雇用されることとなっているもの
- 休学中の者
- 定時制の課程に在学する者
- 前三号に準ずる者として職業安定局長が定めるもの
休学や定時制は雇用保険の適用を受けることになりますが、うっかり見落とす可能性が高いので、注意しましょう。
<健康保険・厚生年金>
学生アルバイトが被保険者となることは少ないですが、被保険者となる可能性はあります。
健康保険法第3条で被保険者について定められていますが、原則として、1週間の労働時間及び1ヶ月の所定労働日数が一般の労働者(いわゆる正社員)の4分の3以上ある場合は、健康保険への加入が必要です。よって、まずは所定労働時間と所定労働日数を確認しましょう。
確認した結果、所定労働時間と所定労働日数が4分の3以上あったとしても健康保険に加入しない場合があります。その主なものを見てみましょう。
- 日雇の場合(1月を超えて引き続き雇用するに至った場合は除く)
- 2月以内の期間を定めて雇用する場合(所定の期間を超えて引き続き雇用するに至った場合は除く)
- 季節的業務で雇用する場合(当初から継続して4月を超えて雇用する予定の場合は除く)
- 臨時的事業で雇用する場合(当初から継続して6月を超えて雇用する予定の場合は除く)
具体的事例に当てはめてみると、上記1や2は、短期アルバイトとして雇用するような場合が該当します。上記3は、みかんの収穫などの季節的に行われる業務で雇用する場合です。上記4は臨時のイベント(例えば博覧会など)で雇用する場合が該当します。
これらに当てはまらない場合は、たとえ学生であっても健康保険への加入が必要です。また、厚生年金の被保険者になる要件は、原則として健康保険の場合と同じと考えて差し支えありません。国民年金の被保険者になるのは20歳以降ですが、厚生年金は20歳未満であっても要件を満たせば被保険者になりますので、間違えないようにしましょう。
学生が一般の労働者の4分の3以上も勤務できるのは夏休み等の期間に限られると思いますので、健康保険・厚生年金の被保険者になることはあまりありませんが、何らかの事情で長期間に渡って一般の労働者の4分の3以上の勤務に就かせる場合は、加入させましょう。
以上、学生アルバイトの社会保険について確認しました。次回は学生アルバイトについて、その他の注意点について確認したいと思います。