企業が新たに従業員を採用した場合、社会保険・労働保険への加入手続きが必要です。手続きの遅れは従業員の保障に影響し、企業側にペナルティが科される可能性もあります。ここでは、主な手続きとおおまかなスケジュールをご紹介します。
1.社会保険の手続き(健康保険・厚生年金保険)
社会保険の対象となるのは、一般的に「週の所定労働時間や月の所定労働日数がフルタイムの4分の3以上」の従業員です(一定の要件を満たす短時間労働者も加入対象となる場合があります)。新入社員が入社したときは、下記のような手続きが必要となります。
- 被保険者資格取得届の提出
健康保険と厚生年金保険に同時に加入する場合、資格取得日(入社日)の翌日から5日以内に手続きを行います(5日を過ぎても手続きはできますが、なるべく早く手続きして下さい)。届出先は、事業所を管轄する日本年金機構の事務センターまたは年金事務所です。 - 被扶養者(異動)届の提出
従業員に扶養家族がいる場合、健康保険の扶養手続きも必要となります。協会けんぽの場合、被扶養者となる人の年間収入が130万円未満(60歳以上または一定の障害状態にある場合は180万円未満)で、かつ被保険者の収入により生計を維持していることが要件とされています。必要書類や認定基準は保険者(各健康保険組合や協会けんぽ)により異なる場合があるためご注意ください。
2.労働保険の手続き(労災保険・雇用保険)
労働保険は労災保険と雇用保険を総称したものです。新しい従業員が加入要件を満たす場合は、雇用保険の資格取得手続きを行います。
- 雇用保険被保険者資格取得届の提出
所轄の公共職業安定所(ハローワーク)に対して、入社日の翌日から10日以内に手続きを行います(10日を過ぎても手続きはできますが、なるべく早く手続きして下さい)。雇用保険は週の所定労働時間が20時間以上、かつ31日以上の雇用見込みのある者が対象となります。 - 労災保険
労災保険はすべての労働者が適用対象です(正社員だけでなくアルバイトやパートも対象)。個別の加入手続きというものはなく、入社した段階で強制適用されます。ただし、初めての従業員採用である場合は、「労働保険関係成立届」「概算保険料申告書」を管轄の労働基準監督署へ提出した上で(前払い)保険料を支払い、事業場単位で労災保険に加入しておく必要があります。
3.スケジュール管理のポイント
- 入社手続き時
- 労働条件通知書や雇用契約書で採用条件を確認し、適用が必要な保険を把握する
- 個人情報や家族情報(扶養の有無)を確認する
- 入社後5日以内
- 健康保険・厚生年金の被保険者資格取得届を提出する
- 入社後10日以内
- 雇用保険被保険者資格取得届をハローワークに提出する
4.遅延や漏れが発生した場合のリスク
- 手続きが遅れると、従業員の健康保険加入が遅れて、医療費が一時立替となることもあり得る
- 雇用保険の失業給付が受けられない・遅れるなど、従業員に不利益が生じる
- 手続きの遅れや漏れによる従業員の損失が発生すると、従業員から会社が訴えられることもあり得る
5.まとめ
新入社員や中途採用者を迎える際の社会保険・労働保険手続きは、労使間の信頼関係を損なわないためにも非常に重要です。忘れがちな提出期限の管理や必要書類の準備は、入社手続きの段階からチェックリストを用いるなど、日頃からの運用ルールが大きく影響します。法改正があった場合は、該当部署や社会保険労務士との連携を密にし、最新の情報を常に把握しておきましょう。
【参考文献・引用元】
- 厚生労働省「雇用保険の手続きについて」
(https://www.mhlw.go.jp/) - 日本年金機構「健康保険・厚生年金保険の被保険者資格取得手続き」
(https://www.nenkin.go.jp/)
本記事は、2025年3月時点の情報をもとに作成しています。