今年も全国安全週間が近づいてきました。そこで今回は全国安全週間について確認したいと思います。
全国安全週間とは
全国安全週間は、昭和3年に初めて実施されて以来、「人命尊重」の基本理念の下に、「産業界での自主的な労働災害防止活動を推進し、広く一般の安全意識の高揚と安全活動の定着を図ること」を目的に、期間を定めて職場の安全に寄与する活動を実施するものです。これまで一度も中断することなく続けられており、今年で91 回目を迎える伝統のある活動です。
全国安全週間の期間は
平成30年7月1日から平成30年7月7日までの1週間です。
全国安全週間のスローガン
全国安全週間にはその年ごとのスローガンが掲げられています。今年のスローガンは次のとおりです。
新たな視点でみつめる職場 創意と工夫で安全管理 惜しまぬ努力で築くゼロ災
全国安全週間の実施事項
今年の全国安全週間では次の6項目が実施事項として掲げられています。全ての事項を実施できるのであればそれに越したことはありませんが、全部の実施が難しい場合でも自社でできる範囲で構わないので取り組んでみて下さい。
安全大会等での経営トップによる安全への所信表明を通じた関係者の意思の統一及び安全意識の高揚
安全パトロールによる職場の総点検の実施
安全旗の掲揚、標語の掲示、講演会等の開催、安全関係資料の配布等の他、ホームページ等を通じた自社の安全活動等の社会への発信
労働者の家族への職場の安全に関する文書の送付、職場見学等の実施による家族の協力の呼びかけ
緊急時の措置に係る必要な訓練の実施
「安全の日」の設定のほか全国安全週間及び準備期間にふさわしい行事の実施
標語等の掲示は手軽にできると思います。中央労働災害防止協会の出版事業部でポスター等の販売がされていますので、それらを利用するのもよいでしょう。また、朝礼などで職場の安全についての呼びかけをしてみてもよいでしょう。
全国安全週間の準備期間について
全国安全週間に先立ち、平成30年6月1日から平成30年6月30日までの期間が「準備期間」となっています。全国安全週間は1週間しかありませんので、その期間に企画立案から始めるとなると、とても間に合いません。そのため、全国安全週間の前にしっかりと準備を整えるための期間となります。先程確認した全国安全週間の実施6項目について、準備期間中から実施していくか、あるいは準備を進めていきましょう。
継続的に実施する事項について
職場の安全は、ある時期だけの取り組みだけでは達成することは出来ません。日頃から地道に、着実に取り組むことが必要です。継続的に実施する事項として次の項目が掲げられています。(下線付きの青文字をクリックすると項目の詳細が開きます。もう1度クリックすると閉じます。)
安全衛生活動の推進
ア 安全衛生管理体制の確立
年間を通じた安全衛生計画の策定、安全衛生規程及び安全作業マニュアルの整備
経営トップによる統括管理、安全管理者等の選任
安全衛生委員会の設置及び労働者の参画を通じた活動の活性化
イ 職業生活における安全衛生教育計画の樹立と効果的な安全衛生教育の実施等
経営トップから第一線の現場労働者までの階層別の安全衛生教育の実施、特に、雇入れ時教育の徹底及び未熟練労働者に対する教育の実施
就業制限業務、作業主任者を選任すべき業務での有資格者の充足
災害事例、安全作業マニュアルを活用した教育内容の充実
労働者の安全作業マニュアルの遵守状況の確認
ウ 自主的な安全衛生活動の促進
発生した労働災害の分析及び再発防止対策の徹底
職場巡視、4S活動(整理、整頓、清掃、清潔)、KY(危険予知)活動、ヒヤリ・ハット等の日常的な安全活動の充実・活性化
エ リスクアセスメントの普及促進
リスクアセスメントによる機械設備等の安全化、作業方法の改善
SDS(安全データシート)等により把握した危険有害性情報に基づく化学物質のリスクアセスメント及びその結果に基づく措置の推進(「ラベルでアクション」の取組の推進)
オ その他の取組
安全に係る知識や労働災害防止のノウハウの着実な継承
外部の専門機関、労働安全コンサルタントを活用した安全衛生水準の充実
労働災害防止対策
ア 転倒災害防止対策(STOP!転倒災害プロジェクト)
作業通路における段差や凹凸、突起物、継ぎ目等の解消
照度の確保、手すりや滑り止めの設置
危険箇所の表示等の危険の「見える化」の実施
イ 交通労働災害防止対策
適正な労働時間管理、走行計画の作成等の走行管理の実施
飲酒による運転への影響や睡眠時間の確保等に関する安全衛生教育の実施
災害事例、交通安全情報マップ等を活用した交通安全意識の啓発
飲酒、疲労、疾病、睡眠、体調不良の有無等を確認する乗務開始前の点呼の実施
ウ 非正規雇用労働者、外国人労働者等に対する労働災害防止対策
雇入れ時教育の徹底・内容の充実
非正規雇用労働者、技能実習生等の外国人労働者を含めた安全管理の徹底や安全活動の活性化
派遣労働者における派遣元・派遣先責任者間の連絡調整の実施
高年齢労働者に配慮した職場改善の実施
エ 熱中症予防対策(STOP!熱中症 クールワークキャンペーン)
WBGT値(暑さ指数)による適正な作業環境管理、作業管理の実施
計画的な熱への順化期間(熱に慣れ、その環境に適応する期間)の設定
自覚症状の有無にかかわらない水分・塩分の積極的摂取
熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾患(糖尿病等)を踏まえた健康管理
熱中症予防に関する教育の実施
業種の特性に応じた労働災害防止対策
ア 建設業における労働災害防止対策
足場等からの墜落・転落防止対策の実施、手すり先行工法の積極的な採用、ハーネス型安全帯の積極的な使用
職長、安全衛生責任者等に対する安全衛生教育の実施
元方事業者による統括安全衛生管理、関係請負人に対する指導の実施
建設工事の請負契約における適切な安全衛生経費の確保
輻輳工事における適正な施工計画、作業計画の作成及びこれらに基づく工事の安全な実施
一定の工事エリア内で複数の工事が近接・密集して実施される場合、発注者及び近接工事の元方事業者による工事エリア別協議組織の設置
イ 製造業における労働災害防止対策
機械の危険部分への覆いの設置等によるはさまれ・巻き込まれ等防止対策の実施
作業停止権限等の十分な権限を安全担当者に付与する等の安全管理の実施
鉄鋼業等の装置産業の事業場における老朽化設備の計画的な更新、優先順位を付けた点検・補修等の実施
ウ 林業の労働災害防止対策
チェーンソーを用いた伐木及び造材作業における保護具、保護衣等の着用並びに適切な作業方法の実施
木材伐出機械等を使用する作業における安全の確保
エ 陸上貨物運送事業における労働災害防止対策
荷台等からの墜落・転落防止対策、保護帽の着用の実施
積みおろしに配慮した積み付け等による荷崩れ防止対策の実施
歩行者立入禁止エリアの設定等によるフォークリフト使用時の労働災害防止対策の実施
トラックの逸走防止措置の実施
トラック後退時の後方確認、立ち入り制限の実施
オ 小売業、社会福祉施設、飲食店等の第三次産業における労働災害防止対策
全社的な労働災害の発生状況の把握、分析
経営トップの意向を踏まえた安全衛生方針の作成、周知
職場点検、4S活動(整理、整頓、清掃、清潔)、KY(危険予知)活動、危険の「見える化」、ヒヤリ・ハット活動等の安全活動の活性化
安全衛生担当者の配置、安全衛生教育の実施、安全意識の啓発
(ア)一般的事項
(イ)東日本大震災及び平成28 年熊本地震に伴う復旧・復興工事の労働災害防止対策
労働災害は長期的には減少していますが、平成29 年の労働災害については、死亡災害が3年ぶり、休業4日以上の死傷災害が2年連続で、前年を上回る見込みです(執筆時点は未確定)。
サービス業での労災件数が増加の傾向にあり、土木建設業での重大災害も報告されています。背景には高齢労働者や非正規労働者、あるいは外国人労働者の増大、未経験者の入職に教育体制が追い付いていないこと等、様々な要因があげられています。
これまでも安全活動に取り組んできた企業であっても時代背景の変遷に伴い、活動の内容に手を加えていく必要性が生じている場合があります。また、当然ながらこれまで安全活動にあまり取り組んでいなかった企業は、これを機会にできることから安全活動に取り組んでみましょう。
<参考資料>
平成30年度全国安全週間実施要綱(厚生労働省ホームページ)