使用者には定期健康診断の実施が義務付けられています。病気の早期発見・早期治療や発病前の生活指導に繋がり、従業員さんに元気で長く働いてもらうために欠かすことのできないものです。労働力不足が叫ばれる昨今においては、重要性がさらに増していると言えるでしょう。
その定期健康診断、業務によっては6か月に1回以上の実施が必要な場合があります。6か月に1回以上の定期健康診断が必要となる業務は複数ありますが、今回は深夜業のケースについて解説します。
特定業務と健康診断
定期健康診断は1年に1回の実施が義務付けられていますが(労働安全衛生法第66条)、特定の業務に常時従事する労働者(※)については、心身に係る負荷の大きさを考慮して6か月以内に1回以上の健康診断が義務付けられています。
※常時使用する労働者とは、次のいずれも満たす労働者です。
- 無期雇用または有期雇用であっても契約期間が6か月以上または更新して6か月以上となることが見込まれており、あるいは6か月以上引き続き使用されている
- 1週間の労働時間数が、同種の業務に従事する通常の労働者所定労働時間数の4分の3以上
特定の業務とは、次のとおりです。
- 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
- 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
- ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
- 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
- 異常気圧下における業務
- さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
- 重量物の取扱い等重激な業務
- ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
- 坑内における業務
- 深夜業を含む業務
- 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
- 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに
- 準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
- 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
- その他厚生労働大臣が定める業務
深夜業はこの中に含まれていますので、深夜業に常時従事する労働者については6か月以内に1回以上の健康診断が必要となります。
特定業務に常時従事する場合の健診内容は、1年に1回の定期健康診断の健診内容に準じます。但し、「胸部エックス線検査及び喀痰検査」は1年以内ごとに1回、定期に行えば足りるとされています。また、「貧血検査」「肝機能検査」「血中脂質検査」「血糖検査」「心電図検査」については、医師が必要でないと認めるときは省略することができます。
深夜業を含む業務に常時従事するとは
それでは「深夜業を含む業務に常時従事する」とは具体的にどのような状態を指すのか、もう少し具体的に見ていきましょう。
<深夜業とは>
22時から翌5時までの時間帯に行われる業務を指します。
<常時従事するとは>
深夜業に「1週に1回以上」又は「1か月に4回以上」従事する場合は、常時従事するものとされています(昭和23年10月1日 基発1456号)。
ここで注意するべきは、「常時従事する」の判断基準に「時間数」が含まれていない点です。極端な例を挙げると、たった1分の深夜業が週1回(又は月4回)行われる場合は、深夜業に「常時従事する」に該当することになります。
基本的には、所定労働時間が22時から翌5時の範囲にあるかどうかの判断で差し支えないと考えますが、深夜に及ぶ残業が恒常的に行われるような状況であれば、「深夜業に常時従事」と考えるべきでしょう。