日本年金機構では平成29年1月から一部業務(年金相談や年金照会)でマイナンバーの利用をスタートさせていましたが、平成30年3月5日よりマイナンバーの利用範囲が拡大されました。今回は、それに伴う変更点を確認したいと思います。
主な変更点
- 資格取得届や資格喪失届など、主要な手続き書類の様式を変更
- 基礎年金番号を記入していた届出は、原則としてマイナンバーを記入して届出することに
- 氏名変更届の提出が原則不要
- 住所変更届の提出が原則不要
以下、それぞれについてさらに詳しく見ていきたいと思います。
1.資格取得届や資格喪失届など、主要な手続き書類の様式を変更
これまで縦横やサイズが混在していた届出様式をA4縦に統一(住所変更届など一部例外あり)
基礎年金番号の記載欄がマイナンバーの記載欄に変更(基礎年金番号を記載して届け出ることも可)
内容が重複していた届出について様式を一つの様式に統合(70歳以上被用者該当届と資格喪失届 など)
届出様式がA4縦に統一されることで、紙の申請書を提出している場合における提出控えを保管する場面では地味に効率化されるのではないでしょうか。
内容が重複していた様式を一つに統合する件も含めて、全体的に事務作業の効率化が図られた改定と言えるのではないでしょうか。
2.基礎年金番号を記入していた届出は、原則としてマイナンバーを記入して届出することに
基礎年金番号の確認が不要に
原則としてマイナンバーを記載することになることで、基礎年金番号を確認する必要がなくなります。マイナンバーの収集はこれまでも税務上必要でしたので、基礎年金番号の確認を省略できることで、地味ながら事務の効率化につながるものと思われます。
資格取得届への住所記載が省略可能に
資格取得届にマイナンバーを記載した場合は、住所の記載を省略することが可能になりましたので、これも事務作業の効率化につながると思われます。
郵送費用が増大する場合もあり得る
郵送で手続書類を提出する場合は、マイナンバーの漏洩問題を考慮して書留や配達記録を使うことが多いと思われ、コスト面においてはデメリットとなることも考えられます。
(当事務所では電子申請を利用しているため、郵送のコストアップに悩まされずに済みそうです。年金事務所や郵便局へ出かける手間も掛からないので、電子申請はおすすめですよ!)
短期滞在外国人や海外居住の日本人は基礎年金番号で手続き
短期滞在の外国人や海外に居住している日本人で、日本に住民票がない場合にはマイナンバーがありません。これは、マイナンバーが住民票コードを変換して作成されることに起因します。つまり、住民票が無ければ住民票コードも無いので、そうするとマイナンバーを振り出すことができないということです。このような場合は、従来通り基礎年金番号を記載して手続きをすることになります。
3.氏名変更届の提出が原則不要
日本年金機構で基礎年金番号とマイナンバーの紐づけが完了している場合、住基ネットの異動情報が年金事務所に提供されることで自動的に年金記録上の氏名が変更されることになるため、氏名変更届の提出を省略することができるようになりました。非常に便利な反面、注意が必要な点もあります。
年金を受給している場合、口座名義の変更を忘れると、年金が振り込まれない可能性があります。
日本年金機構側で氏名が変更された場合は、氏名変更のお知らせが郵送で送られてくることになっているようですが、郵便事故で届かなかったり、うっかり見落としたりする可能性がありますので、市役所等で氏名変更の手続きをした場合は、必ず口座名義の変更も一緒にしておきましょう。
共済組合や企業年金については、氏名は自動的に変更されません。
共済組合や企業年金では引き続き氏名変更の手続きが必要ですので、氏名を変更した場合は共済組合等にお問い合わせください。
健康保険の被扶養者がいる場合は注意が必要(2018年4月11日 加筆)
健康保険の被扶養者は氏名変更の届出省略の対象とされていません。よって、健康保険の被扶養者がいる場合は「健康保険被扶養者(異動)届』を日本年金機構に提出する必要があります。
4.住所変更届の提出が原則不要
住所についても氏名変更の場合と同じで、日本年金機構で基礎年金番号とマイナンバーの紐づけが完了している場合、住基ネットの異動情報が年金事務所に提供されることで自動的に年金記録上の住所が変更されることになるため、住所変更届の提出を省略することができるようになりました。非常に便利な反面、ここでも注意が必要な点があります。
住民票所在地(住所)と実際に住んでいる場所(居所)が違う場合は住所変更届の提出が必要
ねんきん定期便や年金の裁定請求書は郵送で送られてきますが、住所と居所が一致していない場合、居所ではなく住所に送られることで、実際には住んでいない場所に郵送されてしまうおそれがあります。大事な年金記録が他人に見られてしまったり、年金関係の手続きが遅れてしまったりしないよう、住所と居所が一致しない場合は居所を登録しておきましょう。居所を登録するには住所変更届を提出します。(その逆に、郵便物の宛先を居所から住所に変更する場合も、住所変更届を提出します。)
居所を登録した場合、自動的に住所が変更されなくなる
居所を登録した場合、その後に住所が変わっても自動的には変更されません。住所が自動的に変更されると思っていると古い住所のままになっているおそれがありますので、居所を登録した場合は注意しましょう。
以上、日本年金機構におけるマイナンバーの利用拡大と実務への影響を確認しました。より詳しい内容を確認する場合は、日本年金機構の資料またはホームページでご確認ください。
<資料>
年金分野でのマイナンバー制度の利用について(厚生労働省年金局 日本年金機構)
平成30年3月5日から事業主様向けの届出様式が変更になります