国土交通省は、バス・タクシー業やトラック業における睡眠不足を原因とする事故防止及び働き方改革を進める観点から、睡眠不足の状態での乗務を禁止する内容で2018年4月20日より旅客自動車運送事業運輸規則及び貨物自動車運送事業輸送安全規則を改正し、2018年6月1日より施行することを発表しております。
改正の内容
- 事業者が乗務員を乗務させてはならない事由に「睡眠不足」を追加
(旅客自動車運送事業運輸規則 第21条第5項・第7項)
(貨物自動車運送事業輸送安全規則 第3条第6項) - 乗務前点呼で「睡眠不足により安全な運転をすることができないおそれの有無」について確認を義務化
(旅客自動車運送事業運輸規則 第24条第1項第3号)
(貨物自動車運送事業輸送安全規則 第7条第1項第2号) - 夜間長距離運行中の点呼で「睡眠不足により安全な運転をすることができないおそれの有無」について確認を義務化
(旅客自動車運送事業運輸規則 第24条第3項) - 運転者の遵守事項に「睡眠不足により安全な運転をすることができない等のおそれ」について事業者に申し出ることを追加
(旅客自動車運送事業運輸規則 第50条第1項第3の2号・第3の3号)
(貨物自動車運送事業輸送安全規則 第17条第1項第1の2号) - 点呼時の記録事項として、睡眠不足の状況を追加
(旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用について)
(貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について)
点呼は対面で
点呼は対面で行うことが原則とされていますが、運行上やむを得ない場合は電話・業務無線等による点呼(メール・FAX等は不可)が認められています。
運行上やむを得ない場合とは、『遠隔地で乗務が開始又は終了するため、乗務前点呼又は乗務後点呼が乗務員が所属する営業所において対面で実施できない場合等』とされています。
車庫と当該車庫を所管する営業所が離れている場合や早朝・深夜等において点呼執行者が営業所に出勤していない場合等は「運行上やむを得ない場合」には該当しません。
(旅客自動車運送事業運輸規則 第24条第1項、貨物自動車運送事業輸送安全規則 第7条第1項、旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用について、貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について)
また、夜間長距離運行中の点呼については当然ながら対面での点呼はできませんので、電話等で点呼することが定められています。
なお、夜間長距離運行については、『運行指示書上、実車運行(旅客の乗車の有無に関わらず、旅客の乗車が可能として設定した区間の運行をいい、回送運行は実車運行には含まない。以下同じ。)する区間の距離が100kmを超える夜間運行(実車運行を開始する時刻若しくは実車運行を終了する時刻が午前2時から午前4時までの間にある運行又は当該時刻をまたぐ運行をいう。)
』とされています。
(旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用について)
今後は安全運航への投資がますます常用になると予想
高速バスを運行しているWILLER EXPRESS JAPAN株式会社の2018年2月7日付プレスリリースによれば、同社は居眠り運転による事故予防のため様々な取り組みを行っており、代表的なものを取り上げると、
- 睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査
- 運転者用眠気検知機器「FEELythm(フィーリズム)」の導入
- 東京都江東区新木場に乗務員宿泊棟を新設
などとなっております。
特に興味を引くのが運転者用眠気検知機器の導入で、同社では2016年より導入しており、導入前年と比較して事故による車両損傷額が74%も低下したとのことです。確かに機器の導入には費用が掛かりますが、費用を掛けるだけのメリットがあると言えるのではないでしょうか。
また、睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査(アンケート検査と自宅等での就寝時に検査機器を装着してする検査を併せたもの)については、トラック協会やバス協会の会員企業向けに助成制度があります。助成制度を活用することで比較的安価に検査を行うことが出来ますので、スクリーニング検査をまだ実施していない企業はこの機に検討してみるとよいでしょう。詳しくは所属するトラック協会やバス協会にお問い合わせください。
ちなみに、トラック協会やバス協会では安全運行に向けての各種助成制度をこの他にも行っていますので、所属する協会へ一度相談してみるのもよいでしょう。
WILLER EXPRESS JAPAN株式会社では居眠り運転に対する対策だけでなく、脳梗塞や心筋梗塞などの健康に起因する事故の予防対策にも積極的に取り組んでおり、運送・運輸事業における先行的な事例と言えるでしょう。
WILLER EXPRESS JAPAN株式会社と同じ取り組みを誰もが出来るわけではありませんが、自社で出来ることからスタートさせることが肝要です。運送・運輸事業は一度大きな事故を起こせば、取り返しのつかない事態になることもあります。経営環境が厳しい企業も多いと思いますが、安全運行に対する真摯な気持ちは、決して忘れてはならないところです。