2018年4月1日より精神障害者を雇用した場合の特例措置が開始されましが、特例措置についてQ&A形式でまとめました。(確認したい設問をクリックすることで回答をご覧いただけます。)
Q1:特例措置の内容は?
障害者雇用率や障害者雇用納付金の算定等において、次の1~3までの要件をすべて満たす場合は、短時間労働者(1年を超えて雇用されているかその見込みがある者であって、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である者)である精神障害者について、0.5人ではなく1人としてカウントするという内容です。
- 精神障害者である短時間労働精神障害者(障害者雇用促進法における短時間労働者)であること
- 次のいずれかに当てはまる者であること
- 新規雇入れから3年以内の者
- 精神障害者保健福祉手帳の交付日から3年以内の者
- 次のいずれにも当てはまる者であること
- 2023年3月31日までに雇い入れられた者
- 2023年3月31日までに精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者
但し、上記の要件を満たす場合であっても特例措置の対象とならない場合がありますので、以下の設問も併せてご確認ください。
Q2:特例措置が適用される具体的な場面は?
特例措置は、以下の算定をする際に適用されます。
- 障害者雇用率を算定する際の、雇用障害者数の算定
- 障害者雇用調整金額及び報奨金を算定する際の、雇用障害者数の算定
- 障害者雇用納付金額を算定する際の、雇用障害者数の算定
- 在宅就業障害者特例調整金及び在宅就業障害者特例報奨金の上限額を算定する際の、雇用障害者数の算定
- 子会社特例(グループ適用を含む。)における特例子会社の基準として、雇用障害者数や実雇用率の算定
- 企業グループ算定特例における関係子会社の基準として、雇用障害者数の算定
- 事業協同組合特例における特定事業主の基準として、雇用障害者数の算定
Q3:週の所定労働時間が変動する場合の短時間労働者の判断は?
短時間労働者は『週の所定労働時間が20時間以上30時間未満である常用労働者』とされていますが、特例措置が適用される制度間で判断方法が異なることがあります。よって、特例措置の適用を検討する制度ごとに短時間労働者の判断方法を確認する必要があります。参考までに、平成30年度の障害者雇用納付金の制度における判断方法については短時間労働者判断方法(障害者雇用納付金)
をご確認ください。
Q4:フルタイムから短時間労働に切り替えた場合、特例措置は適用されますか?
フルタイム(1週30時間以上)から短時間(1週20時間以上30時間未満)に切り替えた場合であっても、その他の要件を満たす限りは特例措置の適用を受けることができます。但し、特例措置の適用を受けることが出来ることのみを理由としてフルタイムから短時間労働に切り替えることは違法となる可能性が極めて高いと思われますし、仮に違法ではないとしても障害者雇用推進の趣旨に反しますので、差し控えるべきです。
『新規雇い入れから3年以内』の要件について
Q5:雇用形態の変更は何か関係しますか?
雇用形態が途中で変わっても新規雇い入れから3年以内の要件には影響しません。よって、パート→正社員→パートと雇用形態の変遷があったとしても、新規雇い入れから3年以内であり、その他の要件を満たす限りは特例措置の適用を受けることができます。
Q6:精神障害者を再雇用した場合は新規雇い入れになりますか?
前回退職してから3年以内に再雇用した場合は、新規雇い入れとして扱われず特例措置の対象となりません。なお、前回退職した理由がどのような理由であってもこの取扱いに変わりありません。
Q7:グループ企業に再雇用した場合は新規雇い入れになりますか?
以前に退職した企業と今回の再雇用した企業がグループ企業(子会社特例や子会社特例やグループ適用、関係子会社特例又は特定事業主特例の適用を受けている場合)である場合、同一事業主としてみなされることになります。よって、グループ企業A社を退職してから3年以内にグループ企業B社で再雇用したケースでは新規雇い入れの扱いにはならず、特例措置を受けることはできません。
Q8:グループ企業間で転籍した場合の取扱いは?
Q7で確認したようにグループ企業は同一事業主とみなされますので、グループ企業間で転籍した場合における「3年」の起算日は、『グループ企業内で最初に雇い入れた日』となります。
Q9:2018年4月1日より前に雇い入れた場合の特例措置の適用は?
2018年4月1日より前に雇用されていた場合であっても、新規雇い入れから3年を経過するまでは、特例措置の対象となります。従って、例えば2017年4月1日に新規雇い入れされた者は、2020年3月31日までは特例措置の対象となります。この場合、3年の起算はあくまでも新規に雇い入れた日であり、特例措置が開始された2018年4月1日から起算するのではない点に注意してください。
『精神障害者保健福祉手帳の交付日から3年以内』の要件について
Q10:手帳の返還や再交付を受けた場合の取扱いは?
引っ越しにより再交付となった場合や一旦返還した後に再度交付を受けた場合等、一定以上の期間を空けて再交付を受けた場合であっても、雇い入れ後に初めて手帳の交付を受けた日(雇い入れ時点で既に手帳を所持していた場合は雇い入れ日)が特例措置の起算日となります。なお、手帳の返還理由や再交付までの期間等にかかわらず、一律の取扱いとなります。
Q11:療育手帳所持者が『発達障害』により精神障害者保健福祉手帳を交付された時の起算日は?
療育手帳所持者(知的障害の判定を受けた者)が、雇入れ後に『発達障害』により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた場合は、療育手帳の交付日を精神障害者保健福祉手帳の交付日とみなします。
Q12:療育手帳所持者が『統合失調症』により精神障害者保健福祉手帳を交付された時の起算日は?
『発達障害』により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた場合は、療育手帳の交付日を精神障害者保健福祉手帳の交付日とみなすことについては先に確認したとおりですが、この取り扱いは『発達障害』を原因とする場合に限られます。よって、発達障害とは異なる原因で精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた場合には、療育手帳の取得日ではなく、精神障害者保健福祉手帳の取得日が起算日となります。
<参考資料>
精神障害者である短時間労働者に関する算定方法の特例措置 Q&A(厚生労働省 職業安定局 雇用開発部 障害者雇用対策課 雇用促進係)
<引用>
平成30年度 障害者雇用納付金制度 障害者雇用納付金申告書、障害者雇用調整金・在宅就業障害者特例調整金支給申請書 記入説明書(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)
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