短時間労働者(詳細は後程解説します。)の健保・厚年への加入義務は、従業員数(詳細は後程解説します)が501人以上の企業が対象となっています。
2022年10月からは、短時間労働者の健保・厚年への加入義務が、従業員数101人以上の企業に適用されるように変わります。(ちなみに、2024年10月からは従業員数51人以上の企業まで適用拡大される予定です。)
短時間労働者とは
短時間労働者とは、次のすべての条件に当てはまる労働者のことです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2カ月(2022年9月30日までは1年)を超える雇用見込みがある
- 学生ではない
※雇用見込みの要件に変更がありますので、既に短時間労働者の加入義務が生じている従業員501人以上の企業においても、新たに加入義務が生じる短時間労働者がいないか確認しておきましょう。
従業員数とは
短時間労働者の加入義務を判断する際の従業員数は、以下を合計した人数になります。
- フルタイムで働く労働者数
- 週の労働時間と月の労働日数がどちらもフルタイムの4分の3以上ある労働者数
上記を言い換えるならば、(短時間労働者の加入義務が適用される前の)健保・厚年加入者数とも言えます。
たとえば、正社員(フルタイム)60人、契約社員(フルタイムの4分の3以上)30人、パート(フルタイムの4分の3未満)50人の企業は、短時間労働者の加入義務を判定する際には従業員数90人となり、短時間労働者の加入義務は生じません。
短時間労働者の加入義務が生じるタイミング
短時間労働者の加入義務が生じるのは、従業員数が常時101人を上回ることが見込まれる時点になります(直近1年で6カ月以上101人を上回る場合は、常時101人を上回るとみなされます。)。従って、季節的な繁忙により一時的に従業員数が101人を超えたとしても短時間労働者の加入義務は生じません。
どのような手続きが必要?
従業員数が常時101人を上回ることが見込まれることになった場合は、「特定適用事業所該当届」を管轄の年金事務所に提出します。
その際、新たに被保険者となる短時間労働者がいる場合は、該当する短時間労働者の「被保険者資格取得届」を併せて提出します。
シミュレーションをしましょう
短時間労働者を新たに健保・厚年に加入させることになると、保険料負担が増えることになります。飲食業などパート・アルバイトが多い企業の場合は、想定外に保険料負担が膨らむこともあり得ますから、まずは保険料負担がどの程度増えるのか試算が必要です。(厚生労働省ホームページでは簡易に試算できるシミュレーターを用意していますので、そちらを活用してもよいでしょう。)
保険料試算の結果次第では、シフトの見直し等によって短時間労働者に該当する人数を減らす(※)検討が必要になる場合もあります。(なお、シフトの見直しには対象となる労働者の合意が必要になる場合もありますので、慎重に進めて下さい。)
※短時間労働者のシフトを増やす場合と減らす場合の両方が考えられます。
加入対象となる短時間労働者に対しては事前説明をしましょう
新たに健保・厚年の加入対象となるパートやアルバイトに対して、事前に制度の説明をしておくべきでしょう。パートやアルバイトとして働く方の中には、勤務先での社会保険加入を望まない方も一定数いますので、そのような方に引き続き働いてもらうためには、①健保・厚年の加入に納得してもらう、又は②労働時間や賃金額が短時間労働者の要件に該当しないように調整することが必要になります。
①②いずれの場合でもそれなりに時間を要するでしょうし、②の場合であればシフトの見直しや追加人員の新規採用が必要になる場合もあり、早めの準備が必要になります。