新型コロナウイルス感染症による入国制限が終了したことで、外国人労働者の増加が考えられるところです。日本で働く外国人労働者の数は2022年10月末現在で既に182万人を突破しています。同時期の外国人労働者を雇用している事業所数は29万8,790で過去最高を記録しており、この数は日本の全事業所のおよそ4%にあたります。外国人労働者の雇用がますます身近になってきていますので、外国人労働者を雇用する際に抑えておかなければならないポイントを確認しておきましょう。
外国人が日本で働くには就労可能な在留資格が必要
外国人が日本で働くには、出入国管理及び難民認定法に基づき、就労可能な在留資格が与えられていることが必要です。在留資格は「在留カード」で確認します。在留カードは日本に注長期滞在する外国人に交付されるもので、カードには氏名、生年月日、国籍、在留期間のほか、在留資格の種類が記載されています。
近年では偽造在留カードが問題になったこともあり、出入国在留管理庁から提供されている専用アプリで在留カードが本物かどうか確認することができるようになっています。専用アプリはスマートフォンやパソコンで利用できます。
就労可能な在留資格としては、「技術・人文知識・国際業務」や「技能」あたりが最もポピュラーかと思います。在留資格は割と頻繁に改定があり、最近では「介護」「高度専門職」「特定技能」などが追加されました。
外国人は、与えられた在留資格で認められた範囲の仕事しかすることができません。例えば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格であれば、通訳や翻訳の仕事をすることはできますが、資材運搬等の単純作業のみをするようなことはできません。従って、予定する仕事の内容と在留資格で認められた仕事の範囲が合致しているかの確認も欠かせません。
但し、「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」については就労制限がなく、日本人と同じようにどのような仕事であってもすることができます。(「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」については離婚等で状況が変わってしまうので、その点は注意が必要。)
その他に押さえておきたいのが「留学」の在留資格です。この在留資格は、原則として就労は認められませんが、「資格外活動の許可」を得ることでアルバイトをすることができます。資格外活動の許可を得た場合、学校のある期間は1週28時間まで、夏休み等の学校が無い期間は1日8時間までアルバイトをすることができます。また、仕事内容については、風俗営業以外であればどのような仕事でも問題ありません。資格外活動の許可を受けている場合は、在留カードの裏面にその旨が記載されていますので、留学生を雇い入れる場合は在留カードの裏面もきちんと確認しておきましょう。
在留資格のない外国人を働かせたり、在留資格で認められる範囲外の仕事をさせたりすると、使用者は不法就労助長罪で懲役3年以下または300万円以下の罰金が科される可能性があります。
なお、外国人の雇い入れと離職に関してハローワークへ届け出ることが義務付けられていますので、うっかり忘れてしまうことが無いようにご注意ください。
日本で働く外国人には日本の法律が適用される
当たり前と思われるかもしれませんが、日本で働く外国人には日本の法律が適用されます。従って、外国人を雇用して賃金を支払うと源泉所得税や住民税が発生しますし、労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険も適用されます。その他、労働基準法や最低賃金法等の労働関係法令についても適用されます。
租税や社会保険に関して、日本と出身国で二重に適用される場合があります。そうすると、本人の負担が過重になりかねないので、国家間で租税条約や社会保障協定を交わして二重納税や二重の社会保険加入を回避している場合があります。全ての国と租税条約や社会保障協定を交わしているわけではありませんので、外国人を雇用する際に、出身国と日本の間で租税条約や社会保障協定が締結されていないか調査してみると良いでしょう。
なお、租税条約や社会保障協定が交わされている場合であっても、所定の手続きをしなければ恩恵を受けることはできませんので、注意してください。(話が逸れますが、租税条約や社会保障協定については、日本人を外国に転勤させる場合も調べておきましょう。)
技能実習について
在留資格に「技能実習」というものがあります。これは、外国人が日本で実際に働きながら技能、技術、知識等を身に着けて、出身国にそれらを持ち帰ることを目的としたものです。
古くは、教育研修であって労働者ではないとして、最低賃金未満の不正な労働力として利用することが横行したため、現在では雇用契約を交わすことが必須となり、労働関係法令や社会保険の適用があることが明確化されています。
また、外国人技能実習生に対する暴力、脅迫、監禁等が許されないのは勿論のこと、外国人技能実習生やその親族との間に違約金を定めたり、外国人技能実習生の意思に反してパスポートを預かったりすることは認められません。