定年後に再雇用される場合に、仕事内容の見直しやその他の事情により定年前と比べて賃金が減少する場合があります。60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者(雇用保険の被保険者期間が5年以上あることが必要)については、賃金が定年前と比べて75%未満となった場合に、雇用保険から高年齢雇用継続給付を受給することができます。この高年齢雇用継続給付が2025年4月から縮小され、将来的には廃止することが決定しました。
支給率が最大15%から10%に
高年齢雇用継続給付は、賃金の低下率によって給付の支給率が変動する仕組みになっており、賃金の低下率が61.00%以下になると最大の支給率となります。2023年11月現在、最大の支給率は15.00%ですが、2025年4月1日からは最大の支給率が10%になります。(なお、支給対象月に支払われた賃金額に支給率を乗じたものが給付額となります。)
高年齢雇用継続給付が創設された1995年時点では、最大の支給率が25%でした(加えて、賃金が定年前と比べて85%未満となった場合に支給対象となっていました。)。2003年の法改正によって15%に縮小されており、2025年からはさらに縮小されて10%にになります。
高年齢雇用継続給付の役割が終わりを迎える
高年齢雇用継続給付は年金と深い関連があります。その昔は老齢年金の支給開始年齢が60歳でしたが、65歳まで段階的に引き上げられることになりました。そうすると、60歳定年で仕事を辞めてから年金の支給が始まるまでに収入の空白期間が生じることになります。そこで国は定年年齢の引き上げや継続雇用によって年金の支給開始までの空白期間が生じないようにするとともに、使用者の負担を緩和するために導入されたのが雇用継続給付です。
その後、高齢者の就業機会の確保や就業の促進などが行われ、2021年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法では、次のいずれかの措置を講じることを事業者の努力義務とするまでになりました。
- 70歳までの定年引上げ
- 定年制の廃止
- 70歳までの継続雇用制度の導入
- 70歳まで継続的に業務委託契約する制度の導入
- 社会貢献活動に継続的に従事できる制度の導入
その他にも、65歳以上の複業労働者が雇用保険被保険者となることができるように制度拡充するなど、高齢者の就業をサポートするための法整備が複数進められてきました。こうした取り組みによって、定年から年金支給開始までの空白期間を埋めるという高年齢雇用継続給付は終わりを迎えつつあります。
今後、高年齢雇用継続給付を活用していた事業者は、賃金設定の見直しが必要になるところです。その際は、「雇用形態による不合理な待遇差」とならないよう、職務の範囲や責任の程度などを考慮した賃金設定をご検討ください。