留学生を採用する場合には、特別に注意が必要な点がいくつかあります。今回はそれらを確認したいと思います。
日本は原則として外国人は働けない
日本政府観光局が発表している統計によると、2017年の訪日外国人観光客が2800万人を突破したとのことです。日常の生活においても外国人を身近に感じることが多くなってきましたが、実は外国人が日本で働くことは原則として出来ません。
例外的に、高度な技能・経験・知識を有していると認められる場合など、日本で働いてもらうことが特に有益であると考えられる場合に、日本で働くことを認めています。また、日本人の配偶者がいる場合など、日本と特別な関係にある場合も働くことが認められています。
外国人を採用するときは必ず「在留資格」の確認を
日本では外国人の出入国を「在留資格」というもので管理しています。在留資格には様々な種類があり、外国人の方は在留資格で認められた活動しか日本国内ですることが出来ません。(入国管理局ホームページで最新の在留資格を確認することが出来ます。)
例えば、「教育」という在留資格が与えられている場合、学校で教師をするなどして働くことは可能ですが、工場の作業員として働くことはできません。また、「留学」という在留資格が与えられている場合は、そもそも勉強することを目的に入国が認められているので、働くことは認められていません。
外国人を採用するときは、必ず在留資格を確認するようにしましょう。そもそも働くことのできない在留資格であったり、働くことのできる在留資格であっても資格の範囲外になる仕事をさせてしまった場合は、本人だけでなく会社も入管法違反の罪に問われます。(入管法第72条の2 3年以下の懲役または300万円以下の罰金、あるいはそれらの併科)
在留資格は「在留カード」で確認することができます。在留カードの詳細については、入国管理局ホームページでご確認ください。
留学生は日本で働けないの?
「留学」の在留資格は就労が認められていませんが、これには例外があります。在留資格制度には「資格外活動許可」というものがあり、資格外活動許可を受けていれば、本来は就労が認められていない在留資格であっても就労が認められます。
資格外活動許可を受けている場合、在留カードの裏面に資格外活動許可を受けている旨が記載されていますので、在留資格の確認と併せて資格外活動許可の確認もしておきましょう。(パスポートに貼られる証印シールや資格外活動許可書によって確認することも可能です。)
なお、資格外活動許可に基づいて就労する場合は、風俗営業等の例外を除き、原則として仕事の内容に制限はありません。
資格外活動許可を受けている場合の注意点
留学の在留資格で訪日している外国人は、あくまでも勉強するために日本での滞在が認められているわけですから、資格外活動許可で就労が認められると言っても、あくまでもアルバイト程度の就労が認められているにすぎません。
具体的には資格外活動許可での就労には次表のとおり時間制限が設けられています。残業等で限度時間を超えてしまうことも許されませんので、留学生の時間管理には日本人の場合以上に注意してください。なお次表で長期休業中とあるのはいわゆる夏休み等の期間ことです。
在留資格は定期的に確認しましょう
在留資格には有効期限が設けられています。入社した時には問題が無かったとしても、働いてもらっているうちに在留資格の有効期限が過ぎてしまい失効しているおそれがあります。在留資格の有効期限が過ぎてしまっていたりすると不法就労となりますので、定期的に在留資格を確認することが企業にとっては安全です。
留学生と所得税について
国によって税法は異なっており、場合によっては本国と日本の両方で課税されてしまうことがあります。このような問題を解決するために、各国間で租税条約が締結されていることがあります。租税条約は国内法よりも優先して適用されるため、留学生が日本と租税条約を締結している国の出身者である場合は、所得税の計算に注意が必要です。租税条約の締結状況については財務省ホームページでご確認ください。
租税条約の締結国出身者が源泉所得税免除の手続き(※)を行っている場合は、源泉所得税を給与から控除しませんので、お気を付けください。
※2018年3月31日付で国税庁ホームページがリニューアルされたことに伴い、URLが変更になったためリンク先を訂正しました。(2018年4月3日)
その他の注意点
労働基準法第3条では国籍による差別的取り扱いを禁止しています。能力の違い等によって賃金に差があることは差し支えありませんが、外国人という事のみをもって賃金等の待遇に差を設けてはなりません。
なお、労働基準法や社会保険諸法令は、留学生であっても日本人と同じく適用を受けます。