法定障害者雇用率が2.2%に
2018年4月1日より民間企業の法定障害者雇用率が2.0%から2.2%に引き上げられました。(障害者の雇用の促進等に関する法律 43条2項、障害者の雇用の促進等に関する法律施行令 9条、障害者の雇用の促進等に関する法律施行令及び身体障害者補助犬法施行令の一部を改正する政令(平成29年政令第175号))
なお、2.2%というのは経過措置に伴う率であり、2021年3月までのどこかのタイミングで2.3%に引き上げられる予定となっています。
新たに精神障害者が雇用義務の対象に
これまでは身体障害者(身体障害者手帳の所有者)や知的障害者(療育手帳や精神障害者保健福祉手帳の所有者)だけが雇用義務の対象となっていましたが、今回新たに精神障害者(精神保健福祉手帳の所有者)が雇用義務の対象に加えられました。
精神障害者に対する特例措置
精神障害者については、当初は短時間勤務で勤務を開始しその後に通常時間の勤務に移行する傾向が見受けられることから、法定雇用率の計算について特例措置が設けられました。短時間労働者(1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満)は通常0.5人としてカウントしますが、精神障害者である労働者が次の条件をすべて満たす場合には1.0人としてカウントすることが出来ます。
- 雇い入れから3年以内 または 精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内
- 2023年3月31日までに雇い入れ かつ 2023年3月31日までに精神障害者保健福祉手帳を取得した
この特例措置については注意すべき点がありますので、それについては改めてご紹介したいと思います。
必要な対応は?
今回の変更に伴い、障害者雇用義務のある民間企業の範囲が、常時雇用する労働者(注1)が45.5人(注2)以上の企業となります。(法定雇用率の改定前は、常時雇用する労働者が50人以上の企業が対象。)新たに障害者雇用義務が発生した企業については、次の対応が必要となります。
- 法定雇用率を満たすことのできる人数以上の障害者を雇用すること
- 毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告すること
- 障害者雇用推進者を選任するように努めること
注1:1週間の所定労働時間が20時間以上で、1年を超えて雇用される見込みがあるか、または実際に1年を超えて雇用されている労働者が該当します。よって、パートタイマーやアルバイトであっても、条件に該当すれば常時雇用する労働者となります。
注2:障害者雇用率の計算については、常時雇用する労働者数の算定に当たり、短時間労働者(1週間の所定労働時間数が20時間以上30時間未満の者)は0.5人でカウントするため、小数点以下の端数が生じ得ます。
具体的な計算の仕方
最後に具体的な計算の仕方について確認しておきましょう。計算の前提条件は下表のとおりとします。
常時雇用する通常の労働者(1週間の所定労働時間が30時間以上) | 230人 |
内)身体障害者 | 1人 |
知的障害者 | 1人 |
精神障害者 | 1人 |
常時雇用する短時間労働者(1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満) | 30人 |
内)身体障害者 | 2人 |
知的障害者 | 1人 |
精神障害者 | 1人 |
常時雇用する労働者の数=230人+(30人×0.5)=245.0人
法定雇用障害者数=245人×2.2%=5.39人 → 5人(小数点未満切り捨て)
よって、この企業の場合は5人以上の障害者を雇用する必要のあることが分かります。それでは続いて雇用障害者の数を確認してみましょう。
雇用障害者数(30時間以上)=1人+1人+1人=3.0人
雇用障害者数(20時間以上30時間未満)=1人×0.5+1人×0.5+1人×1.0=2.0人
雇用障害者数 合計=3.0人+2.0人=5.0人
以上より法定雇用障害者数5人に対して雇用障害者数が5.0人になりますので、雇用義務を満たしていることになります。
除外率について(2018年4月12日追記)
雇用義務数を算出する際に、障害者が就業することが困難とされる職種の労働者が相当の割合を占める業種の事業所については、業種ごとに定めた割合(除外率)により雇用義務を軽減する制度があります。業種ごとに除外率が設定されており、例えば、最低は航空運輸業ほか5%、最高は船員等による船舶運航等の事業80%と定められています。
それでは、障害者雇用義務数を除外率を用いて具体的に計算してみましょう。先程の企業が医療業(除外率30%)という設定で計算してみます。
常時雇用する労働者の数=230人+(30人×0.5)=245.0人
除外する人数=245.0人×30%=73.5人 → 73人(小数点未満切り捨て)
雇用義務数を算定する基礎なる労働者の人数=245.0人-73人=172.0人
法定雇用障害者数=172.0人×2.2%=3.784人 → 3人(小数点未満切り捨て)
以上の計算により、除外率30%を加味した場合は、3人以上の障害者を雇用する必要があるという結果になります。
関連記事 精神障害者雇用 特例措置の留意点