アルバイトを活用している企業では、アルバイトの急な欠勤に悩んでいるケースがあります。そのような場合に「罰金制度」を設けたい、というご相談を頂くことがあります。そこで、罰金制度について検証してみたいと思います。
罰金制度を設けることはできない
アルバイトの急な休みの抑止策として、罰金制度は有効な手段に思えます。しかしながら、労働基準法に次のような規定があります。
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。(労働基準法 第16条)
会社と従業員は労働契約を交わしています。従業員は会社に対して働く義務を負います。会社は、従業員が働いたなら賃金を支払う義務を負います。アルバイトが欠勤するということは、『その日は会社のために働きますという約束を守れない』=『労働契約の不履行』ということになります。
仮に、欠勤1回につき罰金2,000円という制度を設けた取るするならば、欠勤という労働契約の不履行に対して『違約金』を定めていることになるため、労働基準法第16条に違反することになります。なお、労働基準法第16条に違反した場合は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります。(労働基準法 第119条)
なお、通達によれば労働基準法第16条について、『金額を予定することを禁止するのであって、現実に生じた損害について賠償を請求することを禁止する趣旨ではないこと。』
とされています。(昭22.9.13 基発17号)
よって、アルバイトが急に欠勤したことによって損害が生じた場合には賠償を請求することが理論上は可能です。しかし、現実的にはアルバイトの欠勤によって生じた損害額を立証することは困難であると思われますので、欠勤をしたアルバイトに対して損害賠償を請求することは無いと思われます。
懲戒処分として減給の制裁は可能か?
懲戒処分とは企業内秩序の乱れを正すために行われるものです。アルバイトが欠勤するということは、労働を提供するという約束を一方的に破ることで企業内秩序を乱す行為ですから、懲戒処分の対象とすることは可能です。
但し、違反行為に対して重すぎる懲戒処分は処分自体が無効とされる恐れがあります。一般的には欠勤に対して注意・指導を行い、それでも改まらない場合に懲戒処分を行うことになります。また、懲戒処分としての減給の制裁よりも軽い処分である戒告や譴責の処分を設けていることが通常ですから、まずは戒告や譴責の処分を行い、その後に減給の制裁まで踏み込むことになると思われます。
(参考)こちらもお読みください。戒告・譴責・始末書・顛末書 その違い
よって、懲戒処分として減給の制裁を行うにはある程度の時間を要しますし、欠勤を繰り返すようなアルバイトであれば、減給の制裁に踏み込むに至るまでに退職していることが大半であると思われます。
なお、減給の制裁については労働基準法第91条にて『一回の額が平均賃金の一日分の半額(まで)』
『(減給の制裁が複数回行われる場合、減給の)総額が一賃金支払期における賃金総額の十分の一(まで)』
と上限額が定められていますので、注意が必要です。
注:括弧内は筆者が補足した内容です。
欠勤を抑制する方法<その1>
古典的な方法として皆勤手当や精勤手当と呼ばれる手当を活用する方法が考えられます。欠勤が1日も無ければ(あるいは欠勤が一定の日数以下であれば)手当を支払うことを約束することで、出勤の動機づけとするものです。所定の出勤日数が少ないアルバイトに対しては、固定金額の手当を支払うのではなく、欠勤が1日も無ければその月の時給を20円アップする、といった方法でもよいでしょう。
欠勤を抑制する方法<その2>
アルバイトでも昇給や賞与があるのであれば、欠勤が多ければ(あるいは急な欠勤があれば)昇給や賞与の査定でマイナス要素になることを日頃から伝えておくことも考えられます。
近時は人手不足で採用難ですから、採用した人にはなるべく長く働いてもらいたいとお考えの企業も多いのではないかと思います。継続勤務の動機づけとして、少額でもこまめに昇給や賞与を支払うことは有効な手立てと考えていますが、こまめに行われる昇給や賞与の支払いに欠勤が影響してくるとなるとより身近なことに感じられるため、欠勤に対する考え方を変える効果は十分に期待できるのではないでしょうか。