今年もだんだんと暑さが増してきました。夏場の労働災害で多くなるのが熱中症です。熱中症は最悪の場合、死に至ることもあります。屋外で作業する場合や、屋内であっても熱がこもる場所で作業するような場合は、熱中症対策をしっかり行っておくようにしましょう。
平成29年 熱中症による死傷災害の発生状況
厚生労働省より平成29年の熱中症による死傷災害の発生状況が公表されました。それによると、平成29年の職場における熱中症による死傷者数は544人(内、死亡14人)となっており、その内486人が7月と8月に発生しています。また、死亡事故については14人中13人が7月と8月に発生しています。
熱中症 近年の傾向
近年は熱中症の事故件数が高止まりしており、平成22年以降は毎年400件強~650件程度が発生しています。また、過去5年間(平成25年~平成29年)では建設業と製造業で熱中症事故の約5割が発生しています。
熱中症は11時台、14時~16時台で多く発生しています。また、仕事が終わって帰宅してから体調が悪化するケースも比較的多くなっており、帰宅後に体調が悪化したケースでも死亡事故が発生しています。
7月は熱中症予防強化月間です
厚生労働省などが中心となって、5月1日から9月30日までを「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」の期間としており、その中でも7月は熱中症予防強化月間となっています。既に確認したように、毎年多くの熱中症災害が発生していますので、熱中症対策をしっかり行っておきましょう。以下、熱中症対策を具体的にみてみましょう。
WBGT値(暑さ指数)を把握する
暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標です。 単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されますが、その値は気温とは異なります。暑さ指数(WBGT)は人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい ①湿度、 ②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、 ③気温の3つを取り入れた指標です。
(環境省 熱中症予防情報サイトより抜粋)
WBGT値は上にもあるように、単純な気温だけでなく、湿度や日射・輻射熱までも取り入れた指標になっています。WBGT値が28度を超えると熱中症の発生率が急激に上昇することが分かっています。(なお、激しい運動を伴う場合は、WBGT値が23度程度であっても熱中症の発生率が上昇します。)WBGT値を把握する方法として最も適しているのは専用の測定器を使用することです。本格的な測定器は数万円するものもありますが、簡易なものであれば数千円から販売されています。近くに販売店がくても通信販売サイトで購入することも可能ですから、測定器をまだ持っていないならば、この機に購入するのもよいでしょう。
測定器以外の方法としては、環境省 熱中症予防情報サイトでおおまかなWBGT値が提供されていますので、そちらを参考にすることも可能です。但し、WBGT値は屋内・屋外の違いや風の抜けやすさ等の周辺環境によって差が生じますから、あくまでも参考程度に考えた方が良いでしょう。
職場の暑さ対策をする
WBGT値が高くなる場合は、簡易な屋根の設置、通風の確保、スポットクーラー等の冷房設備の設置、ミストシャワーの設置などの対策を検討しましょう。なお、ミストシャワー等の散水は湿度が上昇するので、その点は注意が必要です。(湿度が上昇すると体温の発散が妨げらることからWBGT値が上昇します。)
休憩場所を整備する
冷房や日陰等の涼しい休憩場所を確保しましょう。休憩場所で横になれるようにしておくと、なお良いでしょう。また、休憩場所には氷や冷たいおしばり、水風呂、シャワー等の身体を冷やすことのできる物や設備を置くように検討しましょう。また、水分補給ができるように、スポーツドリンク等も備え付けておきましょう。
作業時間の短縮や作業時間帯の変更を行う
熱中症が最も多く発生するのは11時~16時までの時間帯になっていますので、この時間帯に作業する場合は、こまめに休憩を取るなどしましょう。また、作業する時間帯を変更することができるのであれば、早朝や夕方以降に作業時間を変更するのも有効です。
熱中症は一人で倒れていたり、ぐったりしているところを発見されるケースが多く見られますので、一人で単独作業しないようにすることも検討しましょう。
服装にも注意する
服装は、透湿性・通気性の良い服装を選び、熱を吸収したり熱を逃がさないような服装は避けましょう。また、陽射しを浴びる場所で作業する場合は、通気性の良い帽子やヘルメットを着用するようにしましょう。
熱への順化を怠らない
暑さに身体を徐々に慣らしていくことを熱への順化と言います。暑さに慣れていない状態では熱中症の発生リスクが高くなります。暑さに身体が慣れていない場合、7日以上かけて徐々に暑さに慣らしていくことで熱中症のリスクが下がります。
ここで注意が必要なのは、夏季休暇等でクーラーの効いた涼しい自宅で4日間過ごすだけで、熱への順化が顕著に失われることです。よって、連続して夏季休暇等を取得した場合は、休暇明けの作業は控えめに心がけましょう。
日常の健康管理も怠らない
睡眠不足、多量の飲酒、体調不良はもちろんのこと、朝食を抜いたりした場合であっても熱中症のリスクを高める可能性があります。従業員への教育も重要ですし、上司や同僚が積極的に健康状態の確認を行うようにしましょう。また、次のような疾病は熱中症のリスクを高める可能性があるため、医師等の意見を踏まえて必要な配慮を行うようにしましょう。
- 糖尿病
- 高血圧
- 心疾患
- 腎不全
- 精神・神経の疾患
- 広範囲の皮膚疾患
- 風邪
- 下痢
緊急時の準備をしておく
熱中症の対策を行っていたとしても、熱中症が発生することがあるかもしれません。熱中症が発生した場合に備えて、応急処置方法の確認・教育や周辺にある病院の把握等をしておきましょう。そして、熱中症の症状が見られるときは、躊躇せずに救急隊を要請するように社内の意思統一をしておきましょう。