皆様は安全衛生活動をどのように行っておられるでしょうか。今回は、中央労働災害防止協会(中災防)が提供しているEラーニングの「なくそうヒューマンエラー」をご紹介したいと思います。
平成29年度の厚生労働省・補助事業として、中災防がヒューマンエラーの予防について学ぶことのできるEラーニング「なくそうヒューマンエラー」をインターネット上で無料公開しています。(掲載期間:2019年3月31日まで)
①ヒューマンエラーによって発生する危険にはどのようなものがあるのか、そして②ヒューマンエラーは何故発生するのか、さらに③ヒューマンエラーをどのように防ぐのか、これらについて、オフィス編、製造業編、小売業編の3つの事例に当てはめながら、学ぶことができるようになっています。3つの中から自社の業態に一番近いものを選べばよいでしょう。
内容は、質・量ともに安全衛生初心者でも難なく学べる程度になっていますので、入社時の安全衛生教育や新任の安全衛生担当者への教育などに活用すると効果的ではないかと思います。
実際に小売業編を試してみましたが、筆者の個人的な感想としては、ヒューマンエラーの防ぎ方について、具体的な事例がもう少し豊富に紹介されていれば、安全衛生初心者でも今後の実務により活かしやすかったのではないかと思いました。(小売業編では具体例の紹介が一瞬で終わってしまいました。)
また、「ヒューマンエラーは起こるものだ」との立場から「ヒューマンエラーが発生しても事故を防ぐにはどうすればよいか?」というところまで踏み込んだ内容であれば、さらに良かったかと思います。
(厚生労働省の補助事業で、ヒューマンエラーの防ぎ方に焦点を置いている為、仕方がない面はあるのですが。)
筆者の個人的な経験談として、刃が高速回転する工作機械で作業していた時に、刃に手を近づけては危険だと分かり切っていたにもかかわらず、疲労でぼーっとした状態だったために、気が付けば刃まであと5㎝の距離まで手を伸ばしてしまったことがありました。はっと気が付いて手を引っ込めて事なきを得ましたが、大変危険な状況でした。
ヒューマンエラーに対して、日本では従来から「ヒューマンエラーを防ぐ」という発想が強くあり、「ヒューマンエラーが発生しても事故を防ぐ」という意識が弱い面がありました。しかし、先程の体験談のように、どれだけ防ぐ手立てを施していてもヒューマンエラーは起きるときには起きるものですので、「ヒューマンエラーが発生しても事故を防ぐ」という観点は重要です。
(先程の工作機械を例に出すと、作業員が刃に手を触れることができないように、物理的なガードが出ている状態でなければ、運転スイッチが入らない構造になっていれば、ヒューマンエラーが起きても事故を防ぐことに繋がります。)
少しばかりの苦言は呈してしまいましたが、結論から言うと非常におすすめができるものになっていると思います。掲載期間が2019年3月31日までなのが惜しいところですが、掲載されている間に、是非1度はご覧頂ければと思います。