働き方改革関連法が成立したことにより、年次有給休暇(以下「有給休暇」とします。)の取扱いが変わります。これまでは有給休暇はあくまでも労働者の権利であって、有給休暇の取得について使用者側は義務も責任も生じませんでしたが、今後は有給休暇の取得に対して使用者の義務と責任が生じることとなります。
どのような内容ですか?
使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。ただし、第一項から第三項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。
(改正労働基準法 第39条第7項)
有給休暇が10日以上付与される労働者に対しては、付与した日から1年以内に5日分を、時季を定めて与えなければならない、とされました。
「有給休暇が10日以上付与される労働者」が対象になりますので、所定労働日数・所定労働時間が少ないために比例付与された結果、付与する日数が10日未満となる労働者は対象外と考えられます。
なお、有給休暇を法定の時期(雇い入れの日から起算して6ヶ月を超えて継続勤務する日)より繰り上げて与える場合(※)については、厚生労働省令で定めるとなっておりますので、現時点で詳細は不明です。
※例えば、入社日に有給休暇を与える場合などが該当します。
そして、時季を定める方法についてですが、条文には具体的な方法は何ら記述がされておりません。この点、労働基準監督署にも確認をしましたが、本稿執筆時点(2018年7月24日)では情報が下りてきていないとのことで、今後、通達等が出されるのではないか、という状況です。
法律案を検討する段階においては、労働者に意見を聞くことや、労働者の意思を尊重することなどが挙がっていたので、そういった内容の通達が出てくるのかもしれません。
例外はないのですか?
前項の規定にかかわらず、第五項又は第六項の規定により第一項から第三項までの規定による有給休暇を与えた場合においては、当該与えた有給休暇の日数(当該日数が五日を超える場合には、五日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しない。
(改正労働基準法 第39条第8項)
時季変更権を行使して有給休暇を与えた場合(第39条第5項)や、計画年休の制度によって有給休暇を与えた場合(第39条第6項)には、その与えた日数を、上記の第39条第7項において時季を定めるところにより与えなければならないとされる「5日」から差し引くことができる、とされました。
業種や業態によっては計画年休の制度を積極的に活用した方がよい場合もあるのではないかと想像しますが、先程も触れたように、第7項でいうところの「時季を定めるところにより」の詳細が現時点では不明であるため、単なる想像の域を出ません。1日も早く詳細が明らかになることが待ち望まれます。
いつから始まりますか?
2019年4月1日です。中小企業の猶予は設定されていません。但し、2019年4月1日以後に新たに付与される有給休暇が対象となり、それより前に付与された有給休暇は対象となりません。
(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律 附則 第4条)
罰則はありますか?
有給休暇を時期を指定して5日を与える定めに違反した場合、30万円以下の罰金が定められています。
(改正労働基準法 第120条)
この件について、今後省令や通達が出ましたら、改めて取り上げてまいります。
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