労災保険率は原則3年ごとに改定されており、今年は改定のタイミングに当たります。新たな保険率については次をご確認ください。
<保険(料)率・労務費一覧表>
特別加入の種別は次のとおりです。
- 第一種・・・中小事業主等
- 第二種・・・一人親方等
- 第三種・・・海外派遣者
なお先日ご案内したとおり、雇用保険料率は平成29年度から据え置きで変更なしとなっております。(平成30年度 雇用保険料率)
<労災保険料の計算に注意が必要な業種がある>
平成29年度と平成30年度で労災保険(料)率や労務費率が変わっている業種があります。これらの業種においては、保険料計算に注意が必要です。以下、順を追って説明していきます。理解しやすくするため、かなり手前の部分から説明していきますが、どうぞお付き合いください。
<そもそも労働保険料とは?>
労働保険料というのは、労災保険と雇用保険の保険料を合わせたものになります。そして、労働保険料は概算で1年分を前払いし、翌年に保険料を確定させて前払いした保険料との差額を精算するという仕組みになっています。なお翌年に行う差額精算は、原則として翌年の6月1日から7月10日の期間内に行うことになっています。
<はじめて労働保険に加入するとき>
創業時など、初めて労働保険に加入するときの保険料支払いについて、おおまかな計算の手順を確認しておきましょう。(二元適用事業と呼ばれる建設業などの場合は、以下とは計算方法が異なります。)
- 保険関係が成立(保険に加入)した時点からその年度が終了するまで(年度は毎年4月1日から翌年3月31日まで)の賃金総額の見込み額を計算する。
- 賃金総額に労災・雇用保険の保険料率を乗じて見込みの保険料を算定する。(概算保険料)
- 算定した保険料を前払いする。
はじめて労働保険に加入するときのこの流れをよく覚えておいてください。次に翌年の流れを見てみましょう。
<翌年の流れ 1>
- 前年4月(又は保険に加入した時点)から当年3月までの賃金総額を集計する。
- 賃金総額に労災・雇用保険の保険料率を乗じて前年の保険料を確定する。(確定保険料)
- 前払いした保険料と確定させた保険料を比較し、差額を精算する。
ここまでで、前年に見込みで前払いした保険料をきちんと差額計算できました。しかしこれで終わりではなく、次の3月までの見込みの保険料(概算保険料)を計算して前払いする必要があります。
<翌年の流れ 2>
- 今後1年間(当年4月から翌年3月まで)の賃金総額見込み額に保険料率を乗じて見込みの保険料を算定する。(概算保険料)
- 概算保険料を前払いする。
1の手順がとても面倒ですね。とても面倒なので、実は簡易な計算方法が認められています。前年度(前年4月から当年3月まで)と今年度(当年4月から翌年3月まで)で賃金総額が大幅に変わらない(前年と比較して50/100以上200/100以下)と見込まれる場合は、前年度の賃金総額を使って今年度の見込み額を計算をしてよいことになっています。つまり、前年度と今年度で保険料率が同じであれば、前年度の確定保険料と今年度の概算保険料は同じ金額になります。
そして、ここからようやく今年の注意点になります。
<今年の具体的な注意点は?>
前年度と今年度で保険料率が同じであれば、(前年度の)確定保険料と(今年度の)概算保険料の計算は1回で済みます。しかし、前年度と今年度で保険料率が変わる場合は、「賃金総額」は同じ金額を使いますが(賃金総額が大幅に変動することが見込まれる場合を除く)、「保険料率」は前年度の確定保険料計算と今年度の概算保険料計算で分けて使う必要があります。つまり、計算が2回必要という事です。
以上、お判り頂けましたでしょうか?上の例は労災保険の対象者と雇用保険の対象者が完全に一致する前提で説明しています。もし、労災保険と雇用保険で対象者が一致しない場合は、労災保険対象者の賃金総額と雇用保険対象者の賃金総額をそれぞれ集計しなければなりません。
仮に労災保険と雇用保険の保険料率が両方とも変わる場合は、『①労災対象者の賃金総額×前年度の労災保険料率』『②労災対象者の賃金総額×今年度の労災保険料率』『③雇用保険対象者の賃金総額×前年度の雇用保険料率』『④雇用保険対象者の賃金総額×今年度の雇用保険料率』と4回の計算が必要になることもあります。幸いにも今回は雇用保険料率が据え置きになりましたので、4回計算することは避けられます。
<最後に>
労働保険料の計算は慣れていないと苦労するかもしれません。当事務所では労働保険料の計算も承っておりますので、お気軽にご相談ください。
(期限ぎりぎりのご依頼になるとお断りせざるを得ない場合もございますので、お早目のご相談をお願い致します。)