従業員を出勤停止にする場合 期間と賃金はどうするべきか?
問題のある従業員への懲戒処分として出勤停止を行う場合、何日ぐらいが妥当なのでしょうか。また、出勤停止の期間中は完全に無給でも問題ないのでしょうか。
<懲戒処分としての出勤停止>
懲戒処分として出勤停止を考えているという事ですが、そのためには懲戒処分を行うための有効要件を満たしている必要があります。まずは、以下の要件を満たしているか確認しておきましょう。
- 就業規則に懲戒の種類及び事由を定めていること
- 就業規則が従業員に周知されていること
- 従業員の問題行動が就業規則上の懲戒事由に該当していること
- 懲戒処分の重さと懲戒事由のバランスが取れていること
<出勤停止と自宅待機は同じ?>
出勤停止と似た言葉に「自宅待機」というものがありますが、果たしてこの2つは同じなのでしょうか?結論を先に述べると、出勤停止と自宅待機は異なります。
先にも述べた通り、出勤停止は懲戒処分の内の1つですが、自宅待機は業務命令として行われるものになります。例えば、懲戒を判断するために事実関係の調査が必要となりますが、事案によっては(分かりやすい例では横領事件の場合等)対象者が出勤していると調査の妨げになる場合があります。このような場合、業務命令として一定期間を自宅で待機するように命ずる場合があります。
自宅待機は懲戒処分ではなくあくまでも業務命令として行われますので、出勤停止と異なり就業規則上の根拠が必ずしも必要とされるわけではありません。
但し、自宅待機の必要性があまりないような場合や、自宅待機の期間が必要以上に長期にわたる場合などは、自宅待機命令が違法と判断される場合もありますので、注意が必要です。
<出勤停止期間の賃金や期間の長さ>
出勤停止は懲戒処分として行われ、従業員の問題行動を原因として労務の提供がされないことから、出勤停止期間中の賃金は支払われないのが一般的です(民法536条第2項)。但し、出勤停止期間中に賃金を支払うように就業規則へ定めることは可能ですし、もしそのような定めをしたのであれば、賃金は支払わなければなりません。
出勤停止の期間について法令による制限はありませんが、労務行政研究所の2018年の調査によると「7日」「14日」「1ヶ月」としている企業割合が高く、中には「2ヶ月」「3ヶ月」「6ヶ月」という長期の出勤停止を定めているケースもあるようです。但し、懲戒事由に対して長すぎる出勤停止期間は公序良俗に反して無効とされるおそれもあることから、出勤停止期間の上限を長期間で定めている場合であっても、実際に出勤停止を行う期間については、慎重に検討したほうがよいでしょう。
なお、余談になりますが、自宅待機期間中の賃金については業務命令として行われることから、賃金を100%支払うのが原則となります(民法536条第2項)。但し、事故発生のおそれや不正行為再発のおそれなど、従業員を自宅待機させることについて実質的理由が認められる場合には、賃金の支払いを要しない場合もあります。