帰宅途中に寄り道した後に怪我 通勤災害の判断は?

 通勤途上で負傷等をしたときは、通勤災害として労災保険から療養給付や休業給付等の給付を受けることができます(労働者災害補償保険第7条第1項第2号)。それでは、次のケースでは通勤災害として給付を受けることができるでしょうか?

事例1

 従業員Aさんは、帰宅途中に夕飯のおかずを購入するためにスーパーマーケットに立ち寄り、買い物を終えていつもの通勤経路を歩いているときに転倒して足首をねん挫しました。

<解説>

 通勤災害は、通勤経路を逸脱し、又は通勤のための移動を中断した場合、逸脱・中断後については原則として通勤と認めないとされていますが、例外として、逸脱・中断が「日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合」には、元の通勤経路に戻ってからは再び通勤と認めるとされています。(労働者災害保険法第7条第3項)。

 厚生労働省令で定める「日常生活上必要な行為であってやむを得ない事由により行うための最小限度のもの」は次のとおり定められています。

  1. 日用品の購入その他これに準ずる行為
  2. 職業能力開発促進法第15条の6第3項に規定する公共職業能力開発施設において行われる職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
  3. 選挙権の行使その他これに準ずる行為
  4. 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
  5. 要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母ならびに同居し、かつ、扶養している孫、祖父母及び兄弟姉妹の介護(継続的にまたは反復して行われるものに限る)

 Aさんがスーパーマーケットに立ち寄って夕飯の買い物をした行為は、上記①「日用品の購入その他これに準ずる行為」に該当しますので、買い物を終えてからいつもの通勤経路上でした怪我は通勤災害として認められます。

 ちなみに、Aさんが転倒してねん挫したのがスーパーマーケット内だった場合は、通勤を逸脱・中断している間の負傷であるため、通勤災害とは認められません。

事例2

 Bさんは、業務を終えて駅に向かう途中で日頃から親しくしている同僚を見つけたので、駅前の喫茶店で1時間ほど雑談し、その後駅に向かっている途中で自転車とぶつかって怪我をしました。

<解説>

 通達(昭48.11.22基発644号)によると、通勤経路の近くにある公衆トイレを使用する場合や、経路上の店でタバコや雑誌を購入する場合、経路上の店でごく短時間お茶やビールを飲む場合等のように、通勤経路の途中で行うようなささいな行為を行う場合は、逸脱・中断には該当しない、とされています。

 Bさんが喫茶店で40分ほど同僚と雑談した行為について、上記の「ささいな行為」に該当するようにも思えます。しかし、この行為は通勤途中で行うような「ささいな行為」に該当せず、「日常生活上必要な行為をやむを得ない事由により行う最小限度のもの」と認められない、とした通達があります(昭49.11.15基収1867号)。従って、Bさんの怪我は通勤災害とは認められないものと思われます。

 以上、通勤災害における逸脱・中断の事例を2つご紹介させて頂きましたが、その判断には難しいものがあることはお判り頂けたかと思います。①逸脱・中断があっても通勤災害として認められる場合があることと、また、逸脱・中断やささいな行為の判断は難しいことから、社会保険労務士等の専門家や労働基準監督署に相談していただければと思います。

 

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