現金給与総額 前年比マイナス0.3% 給与から見る景気動向

 厚生労働省が行っている毎月勤労統計調査(注)によると、令和元年の現金給与総額は322,612円で前年比マイナス0.3%となり、前年比マイナスとなるのは平成25年以来となります。

注:調査対象が従業員5名以上規模の事業所となっており、統計調査の中では比較的中小企業の実態を把握していると考えられます。

 中身をもう少し詳しく見てみると、一般労働者・パートタイマーともに賃金単価は上昇しています(一般労働者が前年比プラス0.6%、パートタイマーが前年比プラス2.7%)。

厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和元年分結果確報」より抜粋
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 一方で、労働時間が減少し(所定内マイナス2.2%、所定外マイナス1.9%)、加えて、パートタイマー比率が上昇した(前年比プラス0.65ポイント)ことにより、結果として、全体値としての現金給与総額は、冒頭で述べた通り前年比マイナス0.3%となっています。

厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和元年分結果確報」より抜粋
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厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和元年分結果確報」より抜粋
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 また、消費者物価指数が前年比プラス0.6%となったこともあり、実質賃金は前年比マイナス0.9%となっています。

厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和元年分結果確報」より抜粋
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 筆者個人の感覚としては、近年は名目賃金の上昇について報じられることが多く、一方で実質賃金についての報道は少なかったように思いますが、実質賃金はほとんど改善されていませんでした。

 令和元年は名目・実質ともに前年比マイナスとなり、少なくとも賃金の観点からは景気の後退局面に入ったと言えるのではないでしょうか。

(内閣府が令和2年2月20日に発表した月例経済報告では、「個人消費は持ち直している」とされています。名目・実質ともに賃金が前年比マイナスとなっている中、個人消費は厳しいと思うのですが、一人当たり賃金のマイナスを雇用者数の増加によるプラスが上回るという考えなのでしょうか?)