契約社員、派遣社員、請負……その違いと雇用上の注意点とは

 雇用には正社員、パートタイマー、アルバイト、契約社員、派遣社員など、様々な形態があります。このほか請負という、ややもすると雇用との境界が曖昧になりがちなものまであるわけですが、これらはいったい何が違うのでしょうか。

それぞれの雇用形態の違い

正社員

 一般的には基幹的業務に従事し、企業の労働者の中で中核的存在であることが期待されます。また、労働時間はいわゆるフルタイム勤務であり、職務や勤務地等には限定が無く、雇用期間に定めの無いことがほとんどです。最近では、職務や勤務地に制限のある「限定正社員」という雇用形態を設けている企業もあります。

パートタイマー

 本来は正社員よりも短時間・短日数で働く者を指しますが、企業によっては正社員と同じ所定時間を働くフルタイムパートがいる場合があります。職務や勤務地等の変更の範囲が正社員よりも小さいことがほとんどですが、正社員との差が極めて小さい場合もあります。(フルタイムパートはパートタイマーの本来の意味からすると矛盾していますが、職務や勤務地等の変更の範囲に着目してパートタイマーとして区分しているものと考えられます。)有期雇用が多いですが、無期契約で働いているケースも案外多いです。

アルバイト

 アルバイトとパートタイマーの明確な違いはありませんが、強いて違いを挙げるとすると、アルバイトは臨時的・短期的という意味合いを含んでいるというのが筆者の解釈です。求人情報でも「短期アルバイト」はよく見かけますが「短期パート」はそれと比べると少ないのではないでしょうか。また、学生は卒業に伴って職場を離れていくことがほとんどですから、学生期間中という短期(?)の雇用という意味で「学生アルバイト」になるのかと思います。

契約社員

 有期雇用で働く者の内、パートタイマー・アルバイト以外の者です。フルタイムであることが多く、職務や勤務地等の変更の範囲が「正社員>契約社員>パートタイマー・アルバイト」という関係性になっていることが多いです。

嘱託社員

 定年後に再雇用した者を嘱託社員としていることがあります。また、高度な技術や知識、豊富な経験を持つ者をアドバイザー的な立場で雇用する者を嘱託社員としていることもあります。基本的には有期雇用であり、労働時間や職務内容等は個々の事情を重視して決定されることが多いです。

無期転換社員

 有期雇用契約期間が通算して5年を超える場合、労働者は無期雇用への転換を求めることができ、使用者はこれに応じる必要があります。この際、労働条件は変えず単に雇用期間の定めを無くして無期雇用に変えるだけの企業もあり、パートタイマーや契約社員と区別して無期転換社員とする場合があります。

派遣労働者

 派遣先と派遣元(人材派遣会社)の関係では労働者派遣契約が交わされます。派遣元は自社が雇用する労働者を派遣先へ派遣し、派遣先は当該労働者を指揮命令する関係になります。「労働契約の当事者と指揮命令関係の当事者がそれぞれ異なる」点が派遣社員の特徴です。

厚生労働省パンフレット 派遣元事業主の皆さまへ 労働者派遣を行う際の主なポイント より抜粋

請負

請負(外注や業務委託など呼ぶ場合もあります)は、「成果物に対して報酬が発生」し「発注者と受注者の間に指揮命令関係が無い」ことが特徴です。それに対して労働契約は「労務提供に対して賃金が発生」し、「使用者と労働者の間には指揮命令関係が有る」ことが特徴であり、請負と労働契約は本来全くの別物です

 労働契約関係にある労働者は、労働基準法などの労働法で保護されています。一方、請負は発注先との間に雇用関係が存在しないため、原則的に労働法の保護を受けません。(労働法ではなく下請法などの適用が考えられます。)

人を雇う際に押さえておきたい各雇用形態の注意点

<短時間労働者・有期雇用労働者の場合>

 パートタイマー等の短時間労働者や契約社員等の有期雇用労働者については、パートタイム・有期雇用労働法によって正社員と比較して不合理な労働条件の禁止が定められており(いわゆる同一労働同一賃金)、賃金、休暇、福利厚生などについて不合理に低待遇となっていないか点検し、必要に応じて待遇を変更することが必要です(中小企業については2021年4月1日より適用)。

 その他では、雇用の調整弁としての期待を否定する気はありませんが、さりとて安易に解雇・雇止めができるわけではありませんので、解雇・雇止めをする前に専門家に意見を求めるようにして下さい。

<派遣労働者の場合>

 派遣先と派遣労働者の間に雇用関係はありませんが、事故やトラブルが起きた際に、派遣先が必ずしも責任を負わないわけではありません。例えば、派遣労働者が派遣先からセクハラやパワハラを受けた場合であれば、派遣労働者や派遣元企業から損害賠償を求められる可能性があります。

 その他では、派遣労働者版の同一労働同一賃金が2020年4月1日より始まっていますし、それ以前にも事業所単位・個人単位の派遣期間制限が導入される等、派遣法は近年目まぐるしく改正されていますので、注意が必要です。

<請負の場合>

 請負は本来、労働法による保護の対象外であるため、受注者が事故やトラブルに遭っても、発注者は原則として責任を負いません。

 しかし、構内請負(受注者が発注者の工場内で作業するような請負)の場合には特に注意が必要で、発注者が受注者に対して、仕事の進め方や労働時間などを細かく指定しているような場合、偽装請負(=名目上は請負契約であっても実態は派遣契約であること)と認定されたり、あるいは直接の労働契約関係にあると認定されることもあり、その場合には、労働法の適用を受けることになります。