雇用保険の特例~新型コロナに関連してどうしても人員削減が必要なとき~

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大が中々落ち着かないところですが、どうしても人員削減が必要になる場合もあるかと思います。

 人員削減の対象となった場合にまずは先々の収入面が心配になるところですが、雇用保険の基本手当(失業等給付)の説明をすることで、その不安も幾分かは和らぐはずです。

会社都合で退職・解雇・雇止めとなった場合はそもそも給付が手厚い

 会社都合で退職(退職勧奨や臨時の希望退職募集など)・解雇・雇止めとなった場合の基本手当の所定給付日数は表1のとおりです。

厚生労働省パンフレット 離職されたみなさまへ から一部抜粋

 これに対して、いわゆる自己都合退職した場合の所定給付日数は表2のとおりです。

厚生労働省パンフレット 離職されたみなさまへ から一部抜粋

 2つの表を見比べると会社都合の退職・解雇・雇止めとなった場合の手厚さが一目瞭然ですね。

 また、自己都合退職の場合には2か月間の給付制限期間がありますが、会社都合の退職・解雇・雇止めの場合には給付制限期間が無いという違いも大きいですね。

雇用保険の特例とは?

 会社都合の退職・解雇・雇止めが新型コロナウイルス感染症に関連している場合は、表1の所定給付日数からさらに給付日数が延長される特例が設けられました。

延長される日数は60日

 表1の所定給付日数分の基本手当をすべて受給してなお、再就職に至らない場合に60日分が延長されます。

 なお、次の場合には、60日ではなく30日の延長となります。

  • 離職時の満年齢が35歳以上45歳未満であって、被保険者であった期間が20年以上の場合
  • 離職時の満年齢が45歳以上60歳未満であって、被保険者であった期間が20年以上の場合

 また、就職困難者(障害のある方など、厚生労働省で定める者)については、所定給付日数がもともと手厚い(勤続1年未満の場合150日、勤続1年以上の場合は300日~360日)ことから本延長措置の対象になっていません。

特例による延長措置の注意点

 次のいずれかに該当する場合は、特例延長給付の対象とはなりません。

  1. 所定の求職活動が無いことで失業認定日に不認定処分を受けたことがある場合
  2. やむを得ない理由が無く失業認定日に来所しなかったことにより不認定処分を受けたことがある場合
  3. 雇用失業情勢や労働市場の状況などから、現実的ではない求職条件に固執する場合
  4. 正当な理由なく公共職業安定所の紹介する職業に就くこと、指示された公共職業訓練を受けること、再就職を促進するために必要な職業指導を拒んだことがある場合

離職票の作成にあたって重要なこと

『(コロナ関係)』を記載

 新型コロナに関連して会社都合による退職・解雇・雇止めで離職する場合の離職票作成ですが、具体的事情記載欄(事業主用)に記載する離職理由の末尾に『(コロナ関係)』と記載して下さい。

 退職勧奨のケースであれば、「退職勧奨による離職(コロナ関係)」といった記載になります。

 『(コロナ関係)』の記載漏れがあると、特例による60日(または30日)延長の対象から漏れてしまう恐れがありますので、記載漏れが無いようにご注意ください。

添付書類に注意

 なお、離職票の提出にあたって解雇通知、雇止め通知、契約期間が満了したことの確認できる契約書・労働条件通知書、退職勧奨に応じたことが確認できる退職届、希望退職の募集案内や申込書といった書類の提出が必要となりますので、どのような書類を用意すればよいか管轄のハローワークにあらかじめ確認しておくとよいでしょう。