令和4年4月1日付 法改正まとめ
労働・社会保険関係の法律や制度は非常に幅が広く、令和4年4月1日に改定・施行されるものだけでもかなりの数に上ります。そこで、今回はそれらをまとめてみましたので、対応状況の確認にご活用ください。(前後する3月や5月にもそれなりに改定・施行がありますが、今回は割愛させて頂きます。)
- 有期雇用労働者の育児休業・介護休業取得要件の緩和
- 育児休業を取得しやすい環境の整備が義務化
- 育児休業に関する諸制度の個別周知や意向確認の義務化
- 求人不受理の対象に育児休業制度の改正に関する事項を追加
- 中小企業にもパワハラ防止措置の義務化
- 一般事業主行動計画の策定・公表が義務となる事業主範囲の拡大
- くるみん認定基準の変更、トライくるみん認定の創設
- 雇用保険率の改定
- 在職老齢年金(60歳~64歳)の支給停止基準を緩和
- 老齢厚生年金(65歳以上)の在職定時改定制度の導入
- 老齢年金の繰り下げが75歳まで可能に
- 国民年金手帳の廃止
- 確定拠出年金の受給開始時期が75歳まで可能に
- 現物給与価額の改定
- 特定理由離職者に対する暫定措置の延長
- 地域延長給付に対する前提措置の延長
1.有期雇用労働者の育児休業・介護休業取得要件の緩和
有期雇用労働者の場合、継続して1年以上雇用されていることが取得要件となっていましたが、この要件が撤廃されました。社内規定の改定が必要になりますので、ご注意ください。
2.育児休業を取得しやすい環境の整備が義務化
育児休業を取得しやすい環境整備として、4つの選択的措置(リンク先資料1ページ目上段①~④)から1つ以上の措置を実施することが必要になります。
3.育児休業に関する諸制度の個別周知や意向確認の義務化
本人や配偶者の妊娠・出産を申し出た従業員に対して、①育児休業制度、②育児休業の申出先、③育児休業給付(雇用保険)、④育休中の社会保険料の4つについて周知し、育児休業取得の意向確認をすることが必要になります。その他、妊娠・出産等を申し出たことに対する不利益取扱いが禁止されます。
4.求人不受理の対象に育児休業制度の改正に関する事項を追加
妊娠・出産等を申し出たことに対する不利益取扱い禁止に違反し、行政からの是正勧告に従わずに公表された場合、ハローワーク等での求人不受理の対象となります。
5.中小企業にもパワハラ防止措置の義務化
これまで中小企業では努力義務となっていたパワハラ防止措置(リンク先資料参照)が義務化されます。
6.一般事業主行動計画の策定・公表が義務となる事業主範囲の拡大
一般事業主行動計画の策定・公表義務が、常時雇用する労働者が101人以上の企業に拡大されます。
7.くるみん認定基準の変更、トライくるみん認定の創設
くるみん認定基準が変更され、併せてトライくるみん認定が創設されます。制度詳細は厚生労働省ホームページでご確認ください。
8.雇用保険率の改定
雇用保険率が0.5/1000上昇し、一般の事業9/1000、農林水産・清酒製造の事業11/1000、建設の事業12/1000となります。被保険者負担分の変更はありませんので、給与から天引きする保険料の計算はそのまま継続で問題ありません。
(なお、10月にも雇用保険率の改定が予定されており、その際は被保険者負担分も増えることになっていますので、給与計算での対応が必要になります。)
9.在職老齢年金(60歳~64歳)の支給停止基準を緩和
在職老齢年金(60歳~64歳)の支給停止調整開始額が28万円から47万円に大幅緩和されます。在職老齢年金の制度詳細は日本年金機構ホームページでご確認ください。
10.老齢厚生年金(65歳以上)の在職定時改定制度の導入
老齢厚生年金(65歳以上)の受給権を取得して以後の保険料負担が年金額に反映されるのは退職時(厚生年金被保険者の資格喪失時)とされていましたが、退職時に限らず毎年9月1日に年金額へ反映されるようになります。
11.老齢年金の繰り下げが75歳まで可能に
老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給開始時期の繰り下げが従来の70歳から75歳に引き上げられます。これにより年金額が最大で84%増額となります。
12.国民年金手帳の廃止
年金手帳が廃止され、今後は基礎年金番号通知書が交付されます。(年金手帳を紛失した際も同様。)
13.確定拠出年金の受給開始時期が75歳まで可能に
確定拠出年金の受給開始時期の上限がこれまでの70歳から75歳に引き上げられます。これにより資産運用する期間を延ばすことが可能になります。
14.現物給与価額の改定
健康保険、厚生年金保険の標準報酬月額算定に係る現物給与価額について、食事の価額が変更されます。詳細は日本年金機構ホームページでご確認ください。
15.特定理由離職者に対する暫定措置の延長
有期雇用で本人の意思に反して契約が更新・延長されなかった場合(当初から期間満了により契約が終了することが明示されている場合を除く)、基本手当の支給を手厚くする暫定措置が設けられていますが、令和7年3月31日まで暫定措置を延長することになりました。
16.地域延長給付に対する前提措置の延長
①雇用機会が不足している地域として厚生労働大臣が指定する地域に居住し、かつ、②再就職促進に必要な職業指導を行うことが適当であると認めた者(個別延長給付を受けることができる者を除く)には、基本手当の支給を手厚くする暫定措置が設けられていますが、令和7年3月31日まで暫定措置を延長することになりました。