一度退職してから再入社した場合、勤続年数の通算は必要?

 一度退職してから再入社することは、パート・アルバイトでは比較的よくあることですし、近年ではいわゆる正社員であっても即戦力として再入社を受け入れるケースが見受けられるところです。

 ところで、勤続給、退職金、休職期間、年次有給休暇などは勤続年数によって変化することが一般的ですが、果たして再入社の場合に以前の勤続年数を通算する必要はあるでしょうか?

勤続年数の通算は原則として必要なし

 賃金(基本給、諸手当、退職金、賞与など)について、その支払い(通貨払い、直接払い、全額払い、毎月払い、一定期日払い)や割増賃金の計算については法令の定めがあるものの、制度設計については、原則として自由に行うことができます。賃金について勤続年数を一切関連させないこともできますし、勤続年数を関連させる場合でも、賃金と勤続年数をどのように関連させるかは自由です。

 勤続年数との関連を自由に設計できるということは、就業規則や賃金規程で「再入社前の勤続年数を通算する」と特に定めているような場合を除いて、使用者と労働者の間で再入社前の勤続年数を通算する合意が形成されているとは考えられず、勤続年数の通算をする必要はないでしょう。

 また、休職制度についてはそもそも法令に定めがなく、任意に自由設計ができるものであることから、賃金と同じく、勤続年数通算に関する特段の定めがない限りは、通算の必要はないと考えられます。

例外的に通算が必要な場合も

 年次有給休暇についても、原則としては再就職前の勤続年数を通算する必要はありません。但し、形式的には雇用が途切れていても、実質的には雇用関係が継続している場合には勤続年数の通算が必要になります。

 典型的な例としては、有期雇用契約を更新する場合、定年退職者を定年後再雇用する場合(※)、会社の合併で従業員に関する権利義務関係が新会社に包括的に継承された場合などが通達で示されています。

※定年退職と定年後再雇用を開始するまでに相当の開きがある場合を除きます。

 賃金や休職制度については、単に有期雇用の契約更新をする場合には勤続年数を通算することがほとんどでしょう。一方、退職金と定年後再雇用の関係においては、定年後再雇用の期間は退職金の算定に参入しないとしていることが多いかと思います。(もちろん、定年後再雇用の期間を退職金計算に参入するように定めることは可能ですが、その場合は退職金の支払い時期についても注意しましょう。)

個別合意による通算など

 就業規則などで勤続年数の通算を定めていない場合であっても、個別の合意によって通算することは可能です。この場合は、後になって言った・言わないで揉めないためにも、合意内容を書面で残すようにしましょう。

 ちなみに、退職金に関しては勤続年数の通算に注意が必要です。以前の退職時に退職金を支払っていた場合、単純に勤続年数を通算してしまうと以前の勤続期間について二重に退職金を支払うことになってしまいますので、調整が必要になります。退職金の調整については、就業規則や退職金規程の変更も必要になりますので、退職金に関しては安易に個別合意で勤続年数の通算を認めることは避けた方がよいでしょう。