両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)

 介護を理由とした退職は、全体に占める割合としては多くありませんが、高齢化社会の進展に伴い増加傾向にあります。経済産業省によると、介護離職に伴う経済全体の付加価値損失は、1年あたり約6500億円と見込まれています。(経済産業省 第1回産業構造審議会 2050経済社会構造部会 2018年9月21日開催)

 政府は「介護離職ゼロ」を目標に掲げており、仕事と介護の両立支援を推進するために設けられた両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)をご紹介します。

※介護は突発的に発生することが多いので、助成金の利用は難しいと感じるかもしれませんが、職場に復帰した後に介護休業を再度取得するケースも多いです。2度目、3度目の介護休業に合わせて本助成金を申請することも可能ですので、従業員さんと密にコミュニケーションを取って介護の予定を確認しておくとよいでしょう。

主な要件

1.介護休業を取得した場合

 介護休業を取得した場合、介護休業取得時と職場復帰時にそれぞれ助成金の対象となります(1年度5人まで)。また、所定の要件を満たす場合には職場復帰時の支給額が加算されます。

<休業取得時>

  • 介護休業の取得や職場復帰について、介護支援プランを作成して支援措置を実施する旨を、あらかじめ労働者へ周知すること。
  • 介護支援プランの作成にあたっては、労働者との面談で介護の状況や今後の働き方についての希望等を確認・記録した上で、プランを作成すること。
  • 介護支援プランに基づき業務の引き継ぎを実施し、対象労働者が合計5日(所定労働日)以上の介後休業を取得すること。

<職場復帰時>

  • 介護支援プランに基づき5日以上の介護休業を取得した労働者に対して、介護休業終了後にその上司または人事労務担当者が面談を実施し、面談結果を記録すること。
  • 面談結果を踏まえて原則として原職に復帰させ、申請日までの間に雇用保険被保険者として3カ月以上継続雇用していること。

2.介護両立支援制度を整備して労働者が利用した場合

 以下の介護両立支援制度を整備して、かつ、労働者が利用した場合に助成金の対象となります。(1年度5人まで)

  • 介護両立支援制度の利用について、介護支援プランを策定して支援する旨を、あらかじめ労働者へ周知すること。
  • 介護に直面した労働者との面談を実施し、面談結果を記録した上で介護の状況や今後の働き方についての希望等を確認のうえ、介護支援プランを作成すること。
  • 介護支援プランに基づき業務体制の検討を行い、対象労働者が以下のいずれか1つ以上の介護両立支援制度を合計20日以上(7と8を除く)利用し、介護両立支援制度の利用終了後から申請日までの間、雇用保険被保険者として継続雇用していること。
  1. 所定外労働の制限(所定労働時間を超えて労働させない制度)
  2. 時差出勤(始業及び終業の時刻を変更するが、1日の所定労働時間は変えない制度)
  3. 深夜業の制限(深夜労働をさせない制度)
  4. 短時間勤務(1日の所定労働時間を1時間以上短縮する制度)
  5. 介護のための在宅勤務
  6. 介護のためのフレックスタイム
  7. 法を上回る介護休暇(要介護状態にある対象家族の介護その他厚生労働省令で定める世話を行うため、有給であって時間単位で利用できる休暇制度)
  8. 介護サービス費用補助(介護サービス費用の一部を事業主が補助する制度)

3.各種加算

 所定の要件を満たすことで支給額の加算があります。

<業務代替支援加算>

 次のいずれかの措置を行った上で、介護休業を取得した労働者が職場復帰した場合に加算されます。

  • 介護休業取得者の代替要員を新規雇用(派遣を含む)する
  • 介護休業取得者の業務を代替する既存労働者へ手当等を支給する

<個別周知・環境整備加算>

 介護休業の取得または介護両立支援制度の利用をした労働者に対し、制度等の個別周知の取り組みを行った上で、仕事と介護を両立しやすい雇用環境整備の取り組みを行った場合に加算されます。具体的には次の1と2の両方の取り組みを実施することが必要です。

  1. 対象労働者に対し、資料を用いて介護休業・両立支援制度の自社制度や介護休業を取得した場合の待遇についての説明を行うこと
  2. 介護休業・介護両立支援制度に関して、社内の労働者に対して以下から2つ以上の措置を講じること
  • 研修の実施
  • 相談体制の整備
  • 事例の収集及び事例情報の提供
  • 介護休業・介護両立支援制度の周知および利用促進方針の周知

支給額

 それぞれの措置に対して次の金額が支給されます。