兼務役員の役職に制限はあるか?
皆様は兼務役員をご存じでしょうか?兼務役員とは役員と労働者の両方を兼務する者を指します。何だか分かったような、分からないような。そんな感じでしょうか?
役員は、会社運営の意思決定を行う、管理監督を行う等がその役割であり(※)、役員と会社の契約関係は委任契約になります。一方、労働者は使用者の指揮命令下で労務を提供して業務を執行することがその役割であり、労働者と会社の契約関係は労働契約(雇用契約)となります。
※指名委員会等設置会社においては、業務執行を担当する「執行役」という役員も存在します。
例えば、財務会計に詳しい役員が必要になったため経理部長を役員とするが、引き続き現場で経理部の切り盛りもしてもらう。そのような場合に兼務役員とすることがあります。
役職は関係するか?
法人内で最も高い役職に就く者を兼務役員とすることが多いと思われますが、より低い役職でも兼務役員とすることは可能でしょうか?
この点、会社法や労働基準法には特段の定めはありません。法人税法34条6項には「役員(社長、理事長その他政令で定めるものを除く。)のうち、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するものをいう」としており、上記「その他法人の使用人としての職制上の地位」について法人税法基本通達9-2-5には「支店長、工場長、営業所長、支配人、主任等法人の機構上定められている使用人たる職務上の地位をいう」とされており、会社の組織図上で確認できるような役職であれば、役職の高い・低いは特に問題ありません。(なお、ここで言う「使用人」は「労働者」と同義と考えて差し支えありません。)
ちなみに上記でも少し触れられていますが、代表取締役、副社長、専務、常務、監査役等は兼務役員とすることができません(法人税法施行令71条)。兼務役員の検討に当たって、まずは税理士に確認しておきましょう。
労務関係の注意点
兼務役員の場合、役員報酬と賃金の区別が問題となることがありますので、契約書等で明確に区別できるようにしておきましょう。
その他、雇用保険では兼務役員となることの届出が必要です。管轄のハローワークに「兼務役員雇用実態証明書」を提出して届出しますが、その際に確認資料として以下の書類の提出を求められます。
- 定款
- 役員就任の議事録又は登記事項証明書の写し
- 組織図
- 役員報酬規程又は報酬額の根拠となる資料
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 出勤簿
- 就業規則又は賃金規程
なお、場合によっては上記書類の一部を省略したり、逆に上記には無い資料の提出を求められる場合がありますので、事前に管轄のハローワークに相談・確認の上で届出をすることをお勧めします。