パワハラの典型例 その2
パワハラの典型例 その1ではパワハラ指針に示されたパワハラの6類型及び6類型の内、「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」の具体例をご紹介しました。
今回はパワハラ6類型の内、「人間関係からの切り離し」と「過大な要求」について具体例をご紹介します。
3.人間関係からの切り離し
<特定の部下を無視する>
部下Aは、上司Bに業務を命じられた際、効率的であると思う仕事のやり方を提案したところ、上司Bに「この提案では逆に非効率だ。」と言われ口論となった。
それ以降、上司Bは部下Aが業務上の質問をしても無視するようになり、他の同僚社員も保身のため部下Aを無視するようになった。
上司Bは、部下Aの同僚社員に対して部下Aを無視するように指示しているわけではありませんが、結果的に上司Bの態度が部下Aを組織内の人間関係から切り離しており、パワハラに該当すると考えられます。
上司の行為は部下に対する影響力が大きいことに留意し、日頃からの部下指導に心掛ける必要があると言えます。
<上司を馬鹿にする態度をとり続ける>
部下AはB部署に長年在籍しており、役職には就いていないものの部署内での発言力が大きかった。ある日、上司Cが部下Aに対して些細な注意・指導を行ったところ、部下Aはこれに腹を立てて上司Cの指示に従わないようになったばかりか、他の同僚社員に対しても上司Cの指示には従わないよう扇動し、上司Cが孤立していった。
人間関係からの切り離しは、「上から下」の関係性だけでなく、「下から上」の関係性でも起こり得ます。また一人に対して同僚が集団で無視をするといった「横から横」の関係性でも起こり得ます。
4.過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制や仕事の妨害)
<部下に過大な仕事を押し付ける>
上司Aが部下Bに「お前は将来、人の上に立つんだから」と、本来は他の課員が行うべき膨大な業務を部下Bに押しつけた。部下Bは自分の業務を終了してから取りかからなくてはならなくなり、帰宅できないような状況が続いた。
上司Aは部下Bの成長を期待していた面があったかもしれませんが、部下Bが帰宅できないよう状況が続いていることから、客観的にみて業務上必要な範囲を著しく超えており、過大な要求に該当すると考えられます。
<炎天下での草むしりを1週間命じる>
営業担当の部下Aはここのところ遅刻を繰り返していた。上司Bは部下Aの気が緩んでいるせいであると判断し、気を引き締める意味で真夏の炎天下での草むしり(終日)を1週間連続で命じた。
営業担当である部下Aの職務と草むしりという業務にはほとんど関連性が無く、また肉体的苦痛を伴う過酷な環境下で長期間にわたって行われていることから、たとえ部下の気を引き締めたいという目的があったとしても、注意・指導の目的からは大きく逸脱していると言わざるを得ません。
以上、今回は「3.人間関係からの切り離し」と「4.過大な要求」のパワハラ事例をご紹介しました。次回は「5.過少な要求」「6.個の侵害」のパワハラ事例をご紹介します。