ベルトコンベアで右腕切断事故
ベルトコンベアで発生した重大事故に対する送検事例の報道がありましたので、事故の概要をお伝えするとともに、ベルトコンベア事故を防ぐ手立てについて考察してみます。
<事故概要>
外国人技能実習生が鋳物の型に使用する砂を清掃するため、スコップで砂をかき集めてベルトコンベアに乗せる作業を行っていたところ、ベルトコンベアの下側に砂が付着しているのを発見しました。ベルトコンベアが動いているにもかかわらず砂を手で取り除こうとしたところ、作動中のローラーに右腕が巻き込まれ、右腕全体を切断することになりました。
管轄の労働基準監督署は、安全防止措置を怠ったとして、法人1社と同社副社長を労働安全衛生法第20条(事業者の講ずべき措置等)違反などの疑いで書類送検しました。
どうすれば事故を防げたか
<気を付けて作業するでは事故を防げない>
気を付けて作業するように指示をしていることが多いですが、「気を付けて作業する」には根本的な弱点があるため事故を防ぐには不十分です。
- 気持ちが焦っているとき、緊張しているとき、落ち込んでいるとき、疲れているとき等、心理状態や体調によってはいくら気合を入れようとしても注意散漫となることは避けられません。
- 作業者がそもそも危険性に気付いていない場合には「気を付ける」ことができません。
- 複数人で作業している場合、気を付けていても勘違いや思い込みにより思わぬ事故が起こることがあります。(声掛けをしても反応が無いため、人がいないと思って機械を動かしたところ、実は人がいたため事故が発生した等)
<物理的・構造的な巻き込まれ防止対策>
事故防止対策として最も望まれるのは、物理的・構造的に事故が起きないようにすることです。ベルトコンベアであれば次のような対策が考えられます。
①コンベア周辺をプラスチック板や鉄板で囲う(事例写真では側面と下面をガードしており、手や体を近づけることができません。)
②コンベアに周辺に近づけないように柵を設置する(写真の安全柵の場合、柵を空けている間はコンベアが動きません。また、人が柵の中に入っていることが分かる仕組みになっています。)
<緊急停止装置の設置>
囲いや柵を設置できない場合には、緊急停止装置の設置が考えられます。ベルトコンベアの場合、コンベヤに沿って這わせたロープを引っ張ることによって装置を停止させることができるタイプの緊急停止装置が適しています。
<作業標準・危険の表示・安全教育>
ソフト面の対策としては、作業標準を定めて作業標準書を作成し周知することや、危険性の表示をすること、安全教育を行うこと等が考えられます。
ベルトコンベアの作業標準では、コンベア稼働中にコンベアの清掃・調整等は行わないことを定めておくことが考えられます。
危険性の表示では、コンベア周辺に「巻き込まれ危険!」など目立つ場所・色・大きさで表示することが考えられます。(表示に図柄があるとさらに良いでしょう。)
安全教育では、雇入れ時や作業転換時の安全教育の他、KY(危険予知)活動やヒヤリハット事例の報告・周知を継続的に行うこと等が考えられます。
なお、今回のように外国人と一緒に作業をする場合には、作業標準書や危険性の表示等について日本語だけでなく外国語も併記することが最も望ましいですが、難しい場合はなるべく簡単な日本語で表記するとよいでしょう。