パワハラ防止措置が中小企業にも義務化

 

 パワーハラスメント(以下「パワハラ」と言います。)という言葉が認知されるようになって久しいですが、2019年に改正された労働施策総合推進法で、使用者にパワハラの防止措置が義務付けられました。

 中小企業の場合、猶予措置として2022年3月31日までは努力義務にとどまっていましたが、2022年4月1日からはいよいよ義務化されます。

 そこで今回は、どのような措置が必要とされているのか簡潔にご紹介します。

4つの措置が必要

 パワハラ防止措置として大きく4つの措置を講じることが必要とされています。

  1. 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
  2. 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
  4. そのほか併せて講ずべき措置

以下、それぞれの措置をもう少し解説します。

1.事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発の具体的な内容は次のとおりです。

  • パワハラの内容やパワハラを行ってはならない方針を明確化し、周知・啓発すること
  • パワハラ行為者について厳正に対処する方針や対処の内容を就業規則等に定めて周知・啓発すること

 パワハラに対する会社の方針などはイントラネットや社内広報での周知・啓発も考えられるところです。

 一方、パワハラ行為者についての対処としては懲戒処分や人事異動が考えられますが、これらにはその根拠が必要となりますので、就業規則に規定するべきです。

2.相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備の具体的な内容は次のとおりです。

  • 相談窓口をあらかじめ定めて周知すること
  • 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること

 相談窓口は①社内に設ける場合、②社外に設ける場合、③社内・社外の両方に設ける場合があります。

 相談窓口を社内に設ける場合は人事部や総務部に窓口を設けても構いませんし、いわゆるライン組織から独立させた窓口を設けても構いません。パワハラはセクハラと複合的に行われることもあるので、男女1名ずつ以上の窓口担当者を置くことが望ましいとされています。また、セクハラ・マタハラ等の相談窓口と一本化することが望ましいとされています。

 相談窓口担当者が相談に対して適切に対応するためには担当者の教育が必要になります。厚生労働省の明るい職場応援団サイトではハラスメント(パワハラ以外のハラスメント含む)の研修教材(動画教材含む)を無料で閲覧・ダウンロードできますので、これらを活用するとよいでしょう。

 次に相談窓口を社外に設ける場合ですが、一般的には月額数千円から数万円の費用が必要で、相談が発生した場合には別途費用が発生することが多いようです。弁護士系・社労士系・医療系など色々と選択可能ですが、自社が外部相談窓口に期待する事とコストの兼ね合いで選定することになるでしょう。

3.職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応の具体的な内容は次のとおりです。

  • 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
  • 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
  • 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
  • 再発防止に向けた措置を講ずること

 これらの対応を適切に行うためには、相談窓口担当者の教育や対応マニュアルの整備が重要なことは勿論のこと、パワハラに対する会社の方針が明確になっていることも重要になるでしょう。

 また、再発防止に向けた措置としては行為者に教育を行うことは勿論のこと、従業員全体に定期的な教育を行うことなどが考えられます。

4.そのほか併せて講ずべき措置

 そのほか併せて講ずべき措置の具体的な内容は次のとおりです。

  • 相談者・行為者・情報提供者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じて周知すること
  • 相談したことや事情聴取に協力したこと等を理由として不利益な取り扱いをしない旨を定めて周知・啓発すること

 プライバシー保護に必要な措置としては、相談対応や事情聴取のマニュアルにプライバシー保護に必要な事項を定めておくことなどが考えられます。

過去参考記事

パワハラの典型例 その1

パワハラの典型例 その2

パワハラの典型例 その3