解雇がどうしても避けられない場合は解雇予告(手当)が必要です
解雇をせずに済むのであればそれに越したことはありませんが、著しい業績の悪化や事業所の閉鎖等の会社事情、あるいは能力不足や懲戒処分といった労働者側の事情により、やむを得ず解雇せざるを得ないことがあります。
労働者を解雇する場合の重要な手続きとして、「解雇予告」及び「解雇予告手当」が労働基準法に定められており、今回はこれらについて解説します。
解雇予告とは
労働者は、解雇されると収入の全部又は一部を失うことになり、生活に困窮する可能性があることから、労働基準法第20条で解雇予告について定めており、解雇の少なくとも30日前には解雇の予告をしなければなりません。
但し、次の者については解雇予告を要しないこととされています。
- 日雇い労働者(継続して1か月を超えて雇用されている者を除く)
- 2か月以内の期間を定めて雇用される労働者(当初の期間を超えて引き続き雇用される者を除く)
- 4か月以内の期間を定めて雇用される季節労働者(当初の期間を超えて引き続き雇用される者を除く)
- 試用期間中の労働者(雇い入れから14日を超える者を除く)
試用期間中は解雇予告が不要であると誤解されている場合がありますが、試用期間中であっても解雇予告が不要なのは雇い入れから14日までに限られますので、ご注意ください。
また、次の場合には労働基準監督署長から解雇予告除外認定を受けることで、解雇予告をすることなく解雇することが可能です。
- 天災などのやむを得ない事由により事業の継続が不可能なった場合
- 労働者の責に帰すべき事由(典型的なものとしては職場での窃盗、横領等)により解雇する場合
解雇予告手当とは
解雇の少なくとも30日前には解雇予告をすることが原則ですが、解雇予告手当を支払うことで予告の日数を短縮することができます。1日当たりの解雇予告手当の額は、労働基準法第12条に定める平均賃金の額と定められています。
従って、即時解雇(解雇を伝えたその日に解雇)する場合であれば、30日分の解雇予告手当(=30日分の平均賃金)を支払うことで解雇予告を省略することも可能です。
解雇予告後の就労
解雇予告をしてから解雇までは、これまで通り勤務させてその賃金を支払います。自宅待機させることも可能ですが、特段の事情が無い限りは、自宅待機させるぐらいであれば解雇予告手当を支払って解雇日を繰り上げることが多いでしょう。
何らかの事情により自宅待機させる場合、自宅待機中の賃金については、労働基準法第26条の「休業手当」の支払いで足る場合もあれば、民法第536条第2項により賃金全額の支払いが必要になる場合もありますので、個別のケースについて具体的かつ慎重な判断が必要になります。
解雇(予告)通知は書面で
解雇予告又は解雇の通知は口頭でも可能ですが、解雇(予告)通知は「解雇の効力がどの時点で発生するのか」を特定するうえで非常に重要な通知ですから、書面で通知するようにしましょう。
解雇は、それ自体がトラブルの原因になる可能性が高いわけですから、トラブルになる要素を極力少なくしておくことが肝要です。