外国人労働者とのコミュニケーション②

 前回は、文化的な違いや労働に対する考え方の違いが原因で意思疎通が上手くいかない事例を取り上げた動画教材(経済産業省)をご紹介しました。

 今回は、厚生労働省が公開している外国人採用に役立つ3つの支援ツールをご紹介します。

①冊子教材「外国人社員と働く職場の労務管理に使えるポイント・例文集~日本人社員、外国人社員ともに働きやすい職場をつくるために」 【PDF】 【Word】

 こちらは、外国人従業員の雇用管理で実際に想定される場面ごとに、「使用者側として理解しておくべきポイントの解説」と外国人従業員のそのまま見せたり話したりすることができる「やさしい日本語による例文や図表」になります。

 「使用者側として理解しておくべきポイント」の一例をあげますと、入社時の提出書類について『外国人社員は、出身国と雇用慣行や社会制度が異なることもあり、背景知識がないことから、特に提出理由について、疑問を持つケースも多いと言われています。このため、各書類をどこで取得すればよいかについての説明(取得方法)や、なぜその書類を提出する必要があるのか(提出理由)について説明することが望ましい。』と解説されています。

 普段当たり前のことについて説明が必要であるという気付きを得るのは難しいことですので、前回ご紹介した動画教材と共に、こちらも一通り目を通しておいたほうがよいでしょう。

 一方、「やさしい日本語による例文や図表」についてですが、そもそも労働に関する事項や税・社会保険に関する事項は法律に基づく内容が多く、日本人に対しての説明であっても難しいものです。

 従って、やさしい日本語に置き換えたとしても内容そのものは難しいので、「やさしい日本語による例文や図表」に対する過度な期待は禁物です。あくまで参考程度にとどめ、試行錯誤しながらものにしていく必要があるかと思います。

②雇用管理に役立つ多言語用語集 【Web】 【Excel】

 先ほども触れたように、労働関係や税・社会保険関係については内容そのものが難しいため、「やさしい日本語」による説明だけでなく、母国語での説明が必要になる場合もあるかと思います。

 執筆現在(2021.7.1)では雇用管理に関係する418語について、9言語(英語、韓国語、中国語(簡・繁)、タガログ語、ベトナム語、ネパール語、ポルトガル語、スペイン語)による翻訳や解説が検索できます。

 やさしい日本語との併用で、より一層の相互理解が期待できます。

③モデル就業規則(やさしい日本語版) 【Word】

 就業規則は、従業員に「周知」することで初めてその効力を発揮しますが、外国人従業員が通常の日本語で作成された就業規則の内容を理解できない場合、周知ができていないとして当該外国人従業員に対する就業規則の効力が否定されかねません

 就業規則を外国人従業員の母国語に翻訳できればそれが最も望ましい対応と考えられますが、就業規則を正確に翻訳することは非常に難易度が高く困難です。翻訳が誤っていたりすれば、却ってトラブルの原因にもなりかねません。また、外部に翻訳を依頼するとしても、就業規則の翻訳に対応する翻訳業者は数が限られており、費用も高額になります。

 次善策としては「やさしい日本語」の就業規則を用意しておくことでしょう。「やさしい日本語」で作成された就業規則であっても外国人従業員には理解が難しいこともあろうかと思いますが、外国人従業員に就業規則の内容を理解してもらう努力をしているその姿勢は、紛争が生じた場合に使用者側にとってはプラスに評価されると思われます。

 就業規則は会社ごとに内容が異なることから、「モデル就業規則(やさしい日本語版)」をそのまま使うことはできないと思いますが、自社の就業規則をやさしい日本語に置き換える際には、大変参考になるのではないかと思います。