統計でみる傷病手当金
傷病手当金はご存じでしょうか?傷病手当金とは、私生活上の病気、怪我によって働くことができない間の収入を補助する制度で、勤務先で健康保険に加入している方や、一定の要件を満たす退職者が利用できる健康保険の制度です。(業務上の病気、怪我による収入減少については、労災保険が利用できます。)
今回は、傷病手当金がどのように利用されているのか、統計情報を見てみたいと思います。
令和4年度は新型コロナが目立つ
令和4年度の全国健康保険協会(協会けんぽ)の傷病手当金の支給件数は31万1099件で、前年度から倍増です。傷病別の件数を見てみると、特殊事例(ほとんどが新型コロナ)が15万1263件(全体の48.62%)で、精神疾患が5万6341件(18.11%)、感染症・寄生虫症が2万2096件(7.10%)、がんが2万1444件(6.89%)と続きます。
支給総額についても前年度から2割以上の増加となる329億円でした。こちらも傷病別に見てみると、精神疾患114億6209万3206円(全体の34.76%)がトップで、以下、特殊事例(ほとんどが新型コロナ)56億6861万5394円(17.19%)がん43億7166万7411円(13.26%)、筋骨格系・結合組織の疾患25億1043万4959円(7.61%)、循環器系の疾患24億435万4666円(7.29%)と続きます。
精神疾患の療養は長期化の傾向か
新型コロナは申請件数こそ多いものの、平均支給日数が7日程度と短いため支給額はそれほどでもありませんでした。(それでも全体の2番目ではありますが。)逆に精神疾患は申請件数で新型コロナの3分の1でありながら、支給総額は新型コロナの2倍以上となっており、療養が長期になる傾向が表れています。
近年ではこの傾向がより顕著になっています。全体の支給金額に対する精神疾患の割合(新型コロナを除外)を年度別に並べると次のとおりです。
令和2年度 35.12%
令和3年度 39.28%
令和4年度 41.98%
精神疾患の申請件数はこの間に2.3%上昇していますが、それと比べて支給金額の伸びは6.86%ということで、精神疾患の療養期間がより長期化の傾向にあるようです。
生きづらい世の中になった耳にする機会が増えたように感じますが、新型コロナが猛威を振るった時期は閉塞感もあって精神的負担を感じる人がより一層増えたかもしれません。新型コロナの影響が和らいだ今、願わくば前向きな明るい社会となって、精神疾患で苦しむ人が一人でも少なくなることを期待する次第です。