危険有害業務に対する保護措置の対象者が拡大されました
2023年5月1日
2023年4月1日から労働安全衛生規則等の一部が改正されました。危険有害な作業を請け負わせる場合の義務等が新たに生じることとなりましたので、解説します。
改正の目的
今回の改正の目的は、作業を請け負わせる一人親方等や、同じ場所で作業を行う自社の労働者以外の者(請負先の労働者、資材搬入業者、警備員など)に対しても、自社の労働者と同等の保護が図られるようにすることです。職場の安全衛生が重要なことは自社の労働者に限ったことではなく、一人親方や同じ場所で作業を行う自社の労働者以外の者にとっても重要であることから、今回の改正に至りました。
改正の内容
改正の内容は、以下の2点です。
- 作業を請け負わせる場合は、請負人(一人親方や下請業者)に対しても、①局所排気装置等の設備の稼働、②特定の作業方法の周知、③保護具の使用の周知が義務付けられます。
- 同じ場所で作業を行う労働者以外の者(他社の労働者や資材搬入業者など)に対して、①立入禁止・喫煙・飲食禁止などの周知及びその徹底、②事故発生時等の退避、③化学物質等の有害性等の掲示が義務付けられます。
改正の対象となる作業
今回の改正の対象となる作業は、次の11の省令で健康障害防止のための保護措置が義務付けられている業務になります。
- 労働安全衛生規則
- 鉛中毒予防規則
- 特定化学物質障害予防規則
- 電離放射線障害防止規則
- 粉じん障害防止規則
- 有機溶剤中毒予防規則
- 四アルキル鉛中毒予防規則
- 高気圧作業安全衛生規則
- 酸素欠乏証等防止規則
- 石綿障害予防規則
- 東日本大震災により生じた放射線物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則
改正の注意点
今回の改正では以下の点に注意する必要があります。
- 重層請負の場合の措置義務者は、請負契約の相手方に対する義務です。仮に三次下請まである場合、一次下請は二次下請に対して義務を負いますが、三次下請に対して義務を負いません。また、二次下請は三次下請に対して義務を負います。
- 事業者が作業の全部を請け負わせる場合は、事業者は単なる発注者の立場にあるため、この作業は事業者としての措置義務の対象となりません。
- 元方事業者は、関係請負人が今回の改正で義務付けられた措置を行っていない場合は、必要な指示をしなければなりません。
- 作業方法や保護具使用等の周知については口頭での周知でも構いません。但し、周知の内容によっては、常時見やすい場所への掲示や書面交付(PCやスマホ等で閲覧できるデータ配布を含む)等の方法で行うことが望ましいでしょう。